[#1] 2017年、仕事始め。

新年明けましておめでとうございます!

…と例年そんな改まって挨拶してない気もしますが、本日より弊社仕事始めなので一応。2017年!
何とか迎えられた…というには半分語弊があり、まあ迎えられかけているのかなと。
ニューゲームズオーダーは2月決算なので、あと2か月ホント大事なんでございますーよーと。
ただ、我らの2016年最大最強ズタボロ要因である所の「枯山水」がついに再入荷秒読み段階(…というほど今すぐじゃないですが)に入り、
今月17日頃にはウチの倉庫に入ってくるらしく、後はもうコンテナごとぶっ潰れる等の事故が起きないよう着荷の無事を祈りつつ、
各方面からご注文をお取りする準備に入るのが、2017年立ち上がりの私共の最重要課題であると!いうことでございます。

枯山水が再入荷すれば、終わるよ!5年に渡った50作常備の旅が終わるよ!旅っていうか行!
ハイソサエティ無くなってるけど!あと最近コヨーテとペンギンパーティの売り上げばかりすごく上がってるせいで、残り1000部くらいになった所で
「在庫少」という表示が必要な事態になっているけど!(先月はペンギンパーティ700個売れたらしいです。凄い。)

変わらないことも多いけれど、随分と様変わりしたことも多く。この2017年を、楽しく、激しく、でも無事で生きて、
ゲーム作って行けたらいいですなあ。あと今年こそお金がちゃんと残るようにしないと、本当にメーカーとして続けていけないので、
私吉田も西山も、今年の中頃以降には懐具合という点で生き返る、という重大な課題を果たせるように。
即身仏になるわけにはいかないので(笑)、生身でまた皆様にゲームをお届けできるよう頑張ります。
そのためには今担当沢田が着手しているパラノイアのシナリオ集クラウドファンディングの話なども非常に重要なのですが…、

https://motion-gallery.net/projects/p...flashbacks
(↑こちら1月末まで受け付け中、既にご支援いただいている皆様誠に有難うございます!)

これについては近日中に改めて、きっちりと書きます!
まずはご挨拶まで、本年もご愛顧の程、よろしくお願い致しまーすー!

 

 

 


[#2] 出せそうにない物を、諦めない為の方法として。パラノイアRPGシナリオ集のクラウドファンディング、1月末までやってます。



2017年立ち上がってから数日、お陰様でばったばたと忙しく、すると言っていた本件のブログ更新が少々滞って早1月10日。
そーろそろお届けしましょう。
パラノイアRPGのシナリオ集、「フラッシュバックス」電子書籍のクラウドファンディングのお話です。

いや〜。2017年の私共にとり、重要な意味を持ったプロジェクトが、沢田担当によりスタートしております。
毎度ながら、「クラウドファンディングサイト『モーションギャラリー』でプロジェクトを公開し、出資を募る…17年立ち上がりから…」、
という沢田くんからの話、聞いちゃあいたんですが、「そういやあ、やるって言ってたけどアレどうなったのかな」と思っていたら、
「始まったよー」というさらりとした報告と共に、割合ガッチリとしたサイトが完成していたのを見ました。

https://motion-gallery.net/projects/p...flashbacks

多分私が上記の内容を確認したのは、皆様と同じタイミングです。へーこんな感じなのか。
あ、ニューゲームズオーダーが主催してるって書いてある。これ、今私たちがやってるんですね!?という(笑)。
身内ながら、本業も休日の文化活動もクソ忙しいのに一夜城のごとくこれを書き上げる沢田さん見事だな〜、と他人事っぽい感想を抱きました。

さて、パラノイアのシナリオ集を(電子書籍を軸に)出版、という話にクラウドファンディングを用いよう、
ということになったのは、ニューゲームズオーダーの2012年から2016年にかけてやってきたゲーム出版と関係があります。

この5年間のリリースの内には、スペースアラートやフードチェーンマグネイト、そして勿論一連のパラノイアRPG関連書籍等、
事前にご予約を募る形で出版が叶った「無理めのタイトル」がありました。
ボードゲーム出版社として事業の中軸を成すようなゲーム(モダンアートとか、オリジナルではあっても主力となった枯山水とか)を出すうえでは、
「原則自己資金で」ということを旨としてやってきており、これは、
「社運を賭けるうえでは、自分たちが全額出資することで、他の主体に気を使うことなく、100%自分達の納得のいく製品づくりを行う」
ということを重視してきたからです。このやり方は私達にとり非常に重要で、最大の長所、持ち味だと思っています。
「上手くいったら自分達のお陰、下手を打ったら自分達のせい」ということで、金銭的な所から他に著しく迷惑がかかることはない、
という自由さは、きわめて難しい製品づくりの現場にあっては、本当に大事な命綱となります。
本位じゃないものを作らざるを得なくなった末、「やっぱりね」と言いながらお墓入る、というのは嬉しくない。
どうせなら自分たちの出来る限りを信じてやって、その至らなさで負けたい。

ということではあるんですが、このやり方は、当然ながら毎回の商業的な成功を強く義務づけられます(続けたければ、ということです)。
勿論そういう仕事ですから、着手している一つ一つのことを商業的成功に導けるように、少なくとも大失敗からできる限り遠ざかるように、
力を尽くすのですが、すると「無理そうなことにはそもそも着手できない」という当然かつ残念な状態に早々に行き当たります。
私達が商業主義の敬虔な信者であれば「商業的な成立が無理そうなことにそもそも価値なんて無いじゃない」と言い放ってしまうところでしょうが、
自分達の場合まず「ゲーム周りでやりたいあれやこれ」ありきですのでー、「金にならんかもしれんけど…それ良いじゃん!」ということしばしばです。
だから折衷案として取り組んできたのが一連の「予約→発売」のプロジェクトでした。

しかし、いよいよもって。自腹でゲームを出し、予約をとってゲームを出し、ということで進んでいくというのは、
「なお一層できないこと」を明らかにすることでもあるなと。本当に無茶なことになってくると、
予約では飽き足らず、先にお金をお預かりしないと着手もできない。(責任が生じますので、お預かりするのもホントは気が進まないんですが…)
例えばそれが今回の、パラノイア【フラッシュバックス】ということです。現在並行してパラノイア25thの3冊目のルールブック、
【ハイプログラマーズ】の日本語版制作が行われていますが(原語版のコンディションから相当の苦戦を強いられていると聞いていますが)
このハイプログラマーズがプレイヤーの皆様にとって「それは出してほしいよね」というものであるのに対し、
フラッシュバックスは、多分出さなくてもがっかりされるようなものではない。「贅沢品」だと認識されている。

…しかしながら。ごく一部の通じた方々には、熱望されている。パラノイアRPGを分厚く、魅力的にするもの。
「知られてない、でも良いもの、欲しいもの」。…そういうのをどうするのか。
「流石に無理だよー、いくらなんでも」と言ってしまえば、ニューゲームズオーダーも「非力な割には頑張ったな」
という辺りで終わってしまうわけですが。
本当は、契約と、翻訳と、流通と、それに先立つお金があれば、何のことは無い、出せるんですぜ。無理なことなど何もない。
千人が千円で買ってくれたらペイするものは、仮に百人しか欲しがらなくても、一人一万円にすりゃ出せたりもする。
十人だったら十万円。そんな感じ。別にRPGの書籍だから価格四桁で、とか、どうしても欲しい十人には関係ないでしょう。
ただまあ先に百人だ十人だと決め込むこともないので、一つ、試しに「この指とまれ」とやってみようと。
意外と集まりゃ…皆お得ですね!だから大きな声で「この指とまれ」を歌おうと。

沢田は、フラッシュバックスが出たらいいんじゃないかと強く思ってる一人です。
そして毎度ながら、「他に誰もやってくれなさそうだし」と、言い出しっぺを駆って出ている迂闊な人です(笑)。
こちらのプロジェクトで募っているお金は、よっぽど予想を遥かに超えるということにでもならなければ完全費用のみで、
ニューゲームズオーダー及び沢田が儲かる話でも何でもないんですが、

・これで盛り上がればトラブルシューターズがもっと売れるかもしれない
・こういう動きから今まで出せなかったものが出せるようになったりしたら、すごく都合がいい、自分達にも、多分皆さんにも

ということです。自分たちが儲かる話じゃないからまた他人事みたいに言っちゃいますが、
パラノイアRPGが好きな方、ご興味ある方、…一口乗っておいたほうが、良いと思いますよお。
ぽしゃった後で「今更だけどよくよく考えたらアレ出してほしかったよね」みたいの、良くないですよお(笑)。
ご参加いただけるのであれば、「シナリオ集か、ちょっと興味あるし乗っとくか」くらいの軽いステップでおいでいただければ十分、十二分に有難いのですが、
根幹のところでは、「こういう試みが、意外と上手く行っちゃったりする」という流れに、一口乗っちゃうというのはいかがでしょうか、というお誘いです。
いやあ。ぼく儲かんないんですけども。こういうことが意外と上手く行っちゃったら…良いですなあ。凄く良い。願いです。
みんなの持ち合いで、手の届かなかったものを手に入れるという。

1月末まで、モーションギャラリーで出資受付しています。
今日のブログの内容など言わずもがなの素敵な紳士淑女の皆様が既に25000円だのをバシバシ投じてらして、
沢田も私も気圧されつつ感謝申し上げておりますが、勿論全員がそんな出すことはないですよ(笑)!
(まあペーパーバック欲しいよね…という話はあるでしょうけれども)
3000円という人は逆にマゾい気がしますが、5000円とか6500円のプランでしたら、お値ごろですらあると思います。
むしろ今は、トラブルシューターズを買ってくれた「一般の」「5000円くらいなら出すよ」というプレイヤーの皆さんに、
どうお知らせすればいいかと感じています。
こういう話の常ですが、募集終わった後に「え、そんなのやってたのー!知らなかったよ、言ってよ〜!」
というコメントをモリモリいただくものですので、沢田も私も本来性分じゃないんですができる限り言いふらしていこうと思っております。
沢田はモーションギャラリーから「気の置けない仲間たちをパーティに招いて出資を募ると良いよ!」みたいなアドバイスのメールをもらって、
「パーティを開くなど滅相もない私たちのようなインフラレッドに何を仰るのか!」と、さめざめと涙に暮れていましたが。
そんな徒手空拳のノーパーリーピーポーである我々を哀れに感じたら、隣のプレイヤーに言っておいてください(笑)。
連絡網で回してください!

 

 

 


[#3] 切り抜けかけて1月終盤。

1月も、残すところ1週間ですねえ。いや〜、早いもんです…とはあまり思わず、先日も西山と「1月、滅茶苦茶長くない?」という話をしていました。
先月バザリとキャント・ストップを何とか売り出して、お陰様で堅調に滑り出しまして、「あとは1月の枯山水再入荷さえ迎えれば…」というつもりでした。
2017年に入ったら新規の製品制作については一旦腰を据えて、慎重に、せざるを得ない、…し、状況を考えると流石にそうしたくもある。と。
先日何とか枯山水を再入荷&出荷再開でき、襲い来る納税群を何とか乗り切り、ようやく人心地。

ではあるんですが、色々仕事がひと段落しているつもりが、予想以上に相変わらず忙しいです(笑)。忙しいというか、それ以上に気ぜわしい。

一つにはお陰様で目標額150万円を達成致しました(!)パラノイアRPGミッション集【フラッシュバックス】です。
https://motion-gallery.net/projects/p...flashbacks

こちらは1月末までとなっておりまして引き続き募集中です。既にご参加いただいている方はご注目されていることと存じますが、

「お金集まる程内容充実する!」

というフェイズに入っております。私がただ今確認したところ現在の金額は1,755,700円。
180万円(つまりあと4万5千円ほど)集まりますと、「Pre-Paranoia」というミッションが一本余分で翻訳、収録されるということです。
200万円で「Trouble With Cockroaches」がさらに追加収録。
250万円で「Das Bot」が追加…、と、お値段変わらずミッション集の内容が充実していくという仕様です。
自分もそう詳しいわけではないですが、「ストレッチ・ゴール」というやり方だそうで。事前にこちらのサイトを見た段階では、
「上手くことが運べばいいけども…、思うようにご支援集まらなかったら、ここらへんも皮算用になってしまうのだからたいへんだー」
と思っていたんですが、幸いにも、その良い意味でのたらればを実現できかけている状況です。
ので、あと1週間、お知り合いのパラノイアRPGファンの皆様へのご周知ご案内、皆様よろしくお願い致します。
あと「お金を出すか、直前まで考えよう」とか「いくら出そうか、直前のお小遣い事情で決めよう…」という皆様も、
是非重々ご検討いただければ幸いです、が…どうか忘れないでください(笑)。
1月末まで!どうぞよろしくお願い致します。


さてパラノイアRPGの話はこのくらいで、もう1つの要因は「第2回東京ドイツゲーム賞」の優秀作群です。
お陰様で枯山水を再入荷しましたので、フェイズとしてはこれらにどのようにあたっていくか…、という考えを始められる状況です。しかし難しいです。
「いのちだいじに」と「ガンガンいこうぜ」の両方に根拠もあれば罠もある、そういう状況。
資金繰りや(枯山水入荷した直後の)在庫状況ということを言えば、もうちょっと時機を見たい。何なら半年くらい着手待ちたい。という気もしていますが、
ゲームをお作りいただいた皆様のお気持ちもあり、またこの賞にご注目いただいている皆様のご期待もあることは、重々承知しておりますので。

枯山水を第1回の大賞に選出したのが2013年の7月でしたから、3年半ばかりの時間を経まして、
商業の規模は若干ながら大きくすることはできましたが、オリジナルゲームを商業ベースで出すことの難しさは、
何も、なーにも変わらないな、という実感を今しています。
ルールや、内容物、アートワーク、箱のサイズ、価格、部数、それに伴う販売計画と、まあ見え易いものだけでも、その気があれば動かし放題で。
動かし放題な分、散らかり放題で。関係各人が見据える完成形に、どこかで強靭なリンクを見出せなければ、ものは実像を結びません。
「これを、こう生む」ということに、どこかで共通の確信、納得、覚悟が要ると。
だから、関係者が増えるほど像がブレるのですが、クオリティを持った人がより多く、本気で関係した先で、皆で結びおおせた実像ほど、良いものになる。
これは間違いない、と思ってるんですが、この「良いもの」を喜んでくれるのもまた、その像の価値を共有してくださる、本気のプレイヤー(単に経験や歴でなく、ゲームプレイに意欲旺盛な、という意味です)の皆様中心、ということなので、
ごくごく短期的な話としては、そういうゲーム作りに収益的な意味があるのかというと、よっぽどのことができない限り、差は生じないかもしれません(笑)。
良いものが作れた上で、それを度を越して強力なものにできた時の、副賞みたいなものかな〜と。
商業ってのはそこを副賞扱いじゃいけないっぽいんですが(笑)、収益性にのみ特価させるなんて、難しいしやりたいわけでも全くないので、
やはり今までと同じやり方で苦しみ作るのですが、…さてー私ら、上手いことできるのかな、今回は?
上手いことできないと…まずいですなあ。今年こそ、まずいことにはしたくないですなあ。しかし、色々と、譲りたくはないですなあ。

まあ…見といてくれよ、皆(笑)。今まで通りの「ガンガンいこうぜ」一辺倒ではないかもしれない僕らですが、何とか切り抜けていきたいと、
心の底から思っていますので!ニューゲームズオーダーをしっかりと保ちながら、なおできる限り、進めてまいろうと思います。

 

 

 


[#4] 店舗臨時休業日程のお知らせ

2月19日(日曜日)はニューゲームズオーダーのワンダーフェスティバル(ワンフェス)出展のため、ビーツーエフゲームズの店舗は休業します。
http://wf.kaiyodo.net/
ご確認のほどよろしくお願い致します。

なおワンフェスでのニューゲームズオーダーのブース番号は「4-02-07」となります。
フロストグレイブ等ミニチュア製品を販売予定です。
ご来場の方はよろしければお立ち寄りください。

 

 

 


[#5] ワンフェスにて、漫画「キャット・シット・ワン」のメタルフィギュア、3体セットを発売します。

新製品発売のご連絡ですが、本日はボードゲームではなく「メタルフィギュア」のお話です。

2月19日幕張メッセにて開催されるワンダーフェスティバル2017[冬]で、漫画「キャット・シット・ワン」の主人公、
パッキー・ラッツ・ボタスキーのメタルフィギュア、3体セットを発売します。価格は税込3500円です。




http://www.genbun.net/

こちらは本作の著者である小林源文先生がご自身で主催されている卓上ゲームブランド「ゲンブンゲームズ」との共同企画製品になります。
メタルフィギュア造形や製造等一切は、ニューゲームズオーダー/タチキタプリントの西山昭憲が担当しております。
ワンフェス当日は、小林源文先生が連名で出展されているブース「7-24-01 美入野工房&ゲンブンマガジン」ブース及び、
「4-02-07 ニューゲームズオーダー」ブースにて販売致します。
こちらはいわゆる一日版権のものではなく、小林源文先生から許諾を得た公式のニューゲームズオーダー製品となります。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて…どこからお話致しましょうか。という書き出しが、こうした発表時、ここの所の常套句となってしまっておりますが、
今回はお話すべき要素があまりにも多いので、本当に難しいです。
「小林源文」「キャット・シット・ワン」「メタルフィギュア」「ミニチュアゲーム」「ニューゲームズオーダー」「ビーツーエフゲームズ」
というワードのいずれかにアンテナが立っている方であれば、本件の意味がいくらかわかるかもしれませんし、
複数、もしくは全部チェックしている、という方であれば、驚かれているかもしれません。
私共にとり、枯山水や、パラノイアや、モダンアートや、ハーフリアルや、そういったものとはまた別に、一つの集大成となるものを、
今回世に出せる、そして問えることになりました。

まず、「キャット・シット・ワン」という漫画、劇画についてですが、まず何よりこれは、私吉田にとって最も思い入れ深い漫画作品の1つです。
ベトナム戦争を舞台にしたミリタリーものなのですが、他の一連の小林作品と一線を画するのが、「登場人物が全員動物」になっている点。
アメリカ人はウサギ、ベトナム人は猫、中国人はパンダでロシア人は熊…、ちなみに日本人はニホンザル。
氏の真骨頂である重厚な劇画描写はそのままに、これらの愛嬌あるキャラクターが織りなすストーリー。
小林源文先生は戦場劇画の大家として著名なので、知っている方からすれば本当に「常識でしょうが!」というご認識ではないかと思います。
ただ私自身は元からミリタリーものを愛読していたわけではなかったので、当時は存じ上げず、学生の頃(20年近く前ですね)、
「何か今までに読んだことの無い、新しい漫画無いかなあ」と新宿の紀伊国屋書店で色々チェックしていたところ、
(当時はインターネットもまだまだ出たてでしたね)、平積みされていた「キャット・シット・ワン」1巻をたまたま見つけ、
そのウサギの兵士たちのビジュアルに心惹かれ、
「今までこういうジャンル読んだことないけど、このウサギの絵は魅力的だし、ものは試しで読んでみよう」
と購入したのが、私が本作を知るきっかけでした。
当時の自分としては、それまで自分が読んでいた漫画とは明らかに異なる流儀で描かれた本作に夢中になりまして、
友人たちに「面白い漫画見つけた!」としきりに薦めていたのを覚えています。

…と、言うことがまずあったのですが、今回何でそれがいきなりこの展開になったかと申しますと(笑)。

2016年の春頃のある日、西山が私に
「さっき小林源文さんがTwitterで『キャット・シット・ワンのボードゲーム作りたい』『公募しようかな』」って言ってたよ」
と知らせてきたのです。西山も私がキャット・シット・ワン好きなことは当然知っていました。
私は思わず「なあああああああにいいいいいい!?」と声を上げ、自分で確認したところ、確かにそう仰っている。うわー。たいへんだ。
何がたいへんだと申しますと、キャット・シット・ワンのボードゲーム。言うは易し、というところです。
思い余ってその場で「クソゲーで良ければ出せると思いますよ!」と口に出して言っちゃいましたが(笑)。

ボードゲームのメーカーで制作をしていてキャット・シット・ワンの愛読者であるという数少ない人間ですから、
自分以上にはっきりとしたことを言える人はそういないんじゃないかとすら思い、
(実際のところ私個人に対して言ってるんじゃないかという位ピンポイントな話でしたから)即座に真剣に考え始めたのですが、
率直に言ってキャット・シット・ワンがボードゲーム化に向いているタイトルとは必ずしも思わず(RPGやゲームブックの方がまだ向いている気がする)、
先生が考えていらっしゃりそうなほど簡単なことでは無い。無いですよ!
私はヤですよ、キャット・シット・ワンのダメなボードゲーム目にするの!
他ジャンルならともかくボードゲームは止めて欲しい!

と、数時間うんうんと考え込みましたが、覚悟を決め、その日のうちに、
「キャット・シット・ワンの件、ゲーム化は生半可ではないですが、ご協力できるなら私どもニューゲームズオーダーをおいて他には無いのではないかと思っています」
というメールを送りました。当時は相変わらずクソ忙しく、
西山も「流石に言ってやるべきだと思ったから伝えたけど…NGOもタチキタも、仕事量的にこれ以上のプロジェクトは無理だと思うぞ!」
と叫んでいました。
うん!完全に同意!酷い、これは酷い!

このメールに対する返事はメールがフィルタにかかったやら何やらでしばらく連絡が無かったのですが、
2016年春のゲームマーケットの現場(コミティアと同時開催でしたね)で、普段B2F店舗に時々いらしている方がNGOブースに来られて
「これ、預かりまして」と、唐突に渡してこられたのが「ゲンブンゲームズ」のスタッフのご担当後藤さんの名刺でした。
「…え!?」と思わず言ったら、「自分、実はゲンブンさんの所で売り子手伝ってるんですよ」という衝撃のお話。世界、狭い!
NGOのこともその方が先方に前向きに伝えていただいていたようで、「是非1回ミーティングをしたい」ということでした。


…ということで後日、担当後藤さんと、何と小林先生自ら立川においでいただきミーティングということになりました。
(小林先生のTwitterでB2Fに来たとわかるツイートがあったのでごく一部の人から「あれ、どういうこと!?」と聞かれましたが流石に口止めしました(笑))
私共としてはとにかく「ボードゲームは、良いものが出せるなら素晴らしいと思いますが、絶対に簡単ではないですし、
ざっくりしたものを出してしまうのは余りにも勿体ないと思います」という意見を率直にお伝えしました。
先方もニューゲームズオーダーもあくまで仕事である以上商業的に利益が上がるプロジェクトにしなければ実行不可能だし、
出来如何によってはネガティブな評価に容易に繋がりうるし、それは絶対に望みませんと。
商業的なことだけを見れば「触らぬ神に祟り無し」というのがNGOの状況ですが、私個人の思いとして見過ごせませんでした、ということでした。

小林先生も後藤さんも本当に真剣にお聞きいただき、アナログゲームとキャット・シット・ワンを絡める上では、
それぞれのファン、あるいは両方のファンが喜ぶものを協力して作れたらいいね、という話になりました。…これはもう、嬉しかったですね。

ともあれ、NGOサイドで、何か符合する海外名作をローカライズしてキャット・シット・ワンバージョンにするような手はあるか、だとか、
オリジナルで作るとしたらこういうゲームなのではないだろうか、と検討したりしたのですが、
後藤さんがB2Fでミニチュアゲームのボードを見て、「こういうのは作れないんですか?」というご質問を受けました。
私や西山は元々ミニチュアゲームの方から来た人間なので、
「いや、商業ベースでのミニチュアゲーム作りはボードゲーム以上に大変です。大前提として、ミニチュアがたくさん要ります」
という返事をしたのですが、そこで、

「一旦ゲーム置いといて、キャット・シット・ワンのメタルフィギュアっていうのはどうだろうか?」

という話になりました。個人的にはそれは。…欲しい。絶対良い!
面白くなるかがわからない(そこが怖い)ボードゲームと違って、メタルフィギュアはまず造形が良ければ正義なので!
それに、絶対多くの方に喜んでもらえる気がしました。
メタルフィギュアの題材としては、キャット・シット・ワンは向いている、という、長年のミニチュア屋の勘もあります。
いっそ「ゲームに使えなくもないような気がするような、メタルフィギュア」をまず作ってみて、反響を測ってみてはどうだろうか、と。

これは一個、良い案じゃないですかね、という話になったのですが、問題は一つ。西山の仕事がまた増えた、ということです(笑)。
西山からすると「けっ・きょく・俺!」という感じだったでしょうけれども。
ご存知の方も多いと思いますが、西山はニューゲームズオーダーの製造方やタチキタプリントの傍ら、
自分のライフワークとして自作のメタルフィギュア造形、製造というのに長年取り組んでいました。
それこそ自分が彼と会った10年以上前の時からやっていましたから、ボードゲーム作りより長いわけです。
滅茶苦茶忙しくはあるわけですが、西山としては「まあ、メタルフィギュアを商業ベースで出すチャンス、魅力的ではあるよね」
という見解だったので、一丁、やってみるか!という話で始まりました。


で、…色々端折りまして!
ホント2016年中色々たいへんでしたが、何とか乗り越え、後藤さんの「ワンフェスで発売したい」というご意向を受け、
この1か月で西山がガンガン追い込み、…出来ました!

手前味噌ですがね。僕は最高だと思っています。素晴らしい出来だと思う。
西山が作ったキャット・シット・ワンのメタルフィギュアが、小林源文先生ご本人の公認をいただいて、商業ベースで出せるというね。
夢ですね。

パッケージのイメージは…、ミリタリーのジャンルがお好きな方なら、一瞬で何のオマージュであるかはわかると思います。
自分はミリタリーのファンでもなくモデラーでもないですが、そういった方々が何を大事に思っていらっしゃるか、
それは可能な限り測り、念じたつもりです。これしかない。
西山自身がこのパッケージのアイデアを出して「これで行きたいんだよね」と言った時、自分は全面的に同意しました。
小林先生にも思った以上に高く評価していただき、喜んでいただいたのも嬉しかった。
オマージュしている先の会社様には特に問い合わせたり許可をいただいたりはしていないのですが…(そのアプローチこそ迷惑である可能性を感じた為です)、
私共としては最大限敬意を表したつもりです。
これを買われる皆様にもご理解やご共感をいただけるのではないか、と勝手ながら思っています。
先方のご商業を邪魔するような意図ではなく、「この物と関わる皆様にとって、自分達が最大限できること…」と考えたら、この結論でした。
最悪先方にご迷惑、という結論がでたら、箱を全部交換対応しよう、と西山と話して、これで行くことにしました。
駄目だったら、私がお叱りを受けるべきことだと思っております。



箱の中にはスポンジを入れることにしました。こちらは、メタルフィギュアの伝統的な文法です。
勿論追加のコストはかかりますし、普通だったらそこまでしないのかもしれませんが、どうせならメタルフィギュアの愛好者の皆様にも喜んでいただきたく、、
そこも妥協はしないことにしました。御覧の写真からさらに、穴の縦横幅を調整してよりフィットさせるらしいです。
フィギュア造形も西山、メタルフィギュアの工場選定・複製手配も西山、パッケージのDTPも西山、箱の製造手配も西山、スポンジの手配も西山。
西山祭りです(笑)。横にいて長年一緒に物を作ってながら「凄いなあ」と思ってます。
西山が、できなかったことをできるようにしていく過程を、自分はずっと見てきたので。


…ということです。
本件、大幅に西山案件なのですが、私としては感無量です。こんな日が来たかと。わからんもので。
66歳にしてなお精力的にご執筆を続けられている、憚りながら「偉大なる先輩」である小林先生と直接仕事をさせていただけ、
メタルフィギュアという、ボードゲーム以上にニッチなジャンルの物でありながらもギリギリの所で商業ベースと言える製造・販売計画を作り上げられ、
西山のやってきたことが1つ形になる。

…売れてくれ!

実の所前例が無いとも言える、新しい試みなので、自分としては「これは絶対良い」「多くの人に喜んでいただける、胸躍るものになっている」
と強く思っている一方「メタルフィギュアというものを売っていくのは、簡単じゃない」とも思います。
ただ、自分達が良いと信じている様々なことが、多くの皆様にとってもそうであればと思います。
売れてくれたら、気が早いですが、次、ということもあり得るので。
ワンフェスにお越しの皆様は、是非チェックしていただければ幸いです。
ワンフェス以後については、ワンフェス以後に、お知らせする予定です。

あ、最後に1点!今回ワンフェスに向け、ゲンブンゲームズ様サイドより「ミニチュアを塗らない方向けというものがあれば嬉しい」というお話しがあり、
「バレル仕上げ(磨き加工)」のバージョンを数量限定で用意しました。
ノーマルバージョンは双方のブースで販売しますが、そのまま飾れるよう、
光沢が出るように加工してあるバレル仕上げのバージョンはゲンブンゲームズ様のブースのみでの販売となります。
…よろしければ両方お求めください(笑)!
それではワンフェス当日、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

 


[#6] キャット・シット・ワンのメタルフィギュア、もう少し製品のご紹介。



キャット・シット・ワンのメタルフィギュア、パッキー・ラッツ・ボタスキーの3体セットをワンフェスで発売します、
という発表を先日しましたが、本日はもう少し具体的に中身をご紹介します。
メタルフィギュア、ということを決めた時に、こちらのアイテム、さてどういった方にチェックしていただけるかな、ということを話し合い、

・メタルフィギュア及びミニチュアゲームをご愛好の皆様
・キャットシットワン及び小林源文先生のファンの皆様
・かわいい動物関連のものが幅広く好きな皆様

という風に分かれるのではないか、という話になりました。
メタルフィギュアと一口に言っても、愛好者向けの(玄人仕様という感じの)ものと、
言わばお土産物のように敷居低くするべきものでは、細部の仕上げは自然変わることになります。
今回のものはより幅広い方に手に取っていただきたいと考えましたので、西山が造形を開始する前に

・基本「一体成型」で作る
・塗装しなくても見栄えがする作りにする

という2点を確認しました。
メタルフィギュアでもより精密、緻密な作りをしたものになると腕や首、持ち物やマント等が個別のパーツになっているものが少なくありません。
手慣れた方々であれば、組み立てるのも楽しみの内、ともすればポーズを組み替える幅が得られて嬉しい、という方も多いですが、
何分パーツも小さいですから、少々のコツと、場合によってはピンバイスや真鍮線等の工具が必要で、パーツがバラバラな程骨が折れるのも事実です。
(という理由で、愛好者の中でも「一体成型の方が好き」という方も勿論少なくありません)

塗装についてもそうで、近年はミニチュア塗装用の使い易い塗料が各種発売されていて、イメージよりは格段塗り易く、
正直「塗り絵感覚でどなたでも塗れる」ものなのですが、それでも「自分で塗るのは無理」と、
敷居を感じられる方もいらっしゃるだろうということで、上記のようにすることで、手間最小限で満足な姿になるのが大事、と考えました。
このウサギたちの体型は比較的一体成型に適している(手足が細長くないですから)というのも幸いでした。



最終的にはベース(台座)のみ別パーツとなりましたが、モデル本体は見事一体成型になりました。
一体成型だとモデルに満足なポーズを取らせるのが少々難しくなりますが、制限の中で良い形になっていると思います。
ベースもメタル製で、その上地面の造作(モールド)が加えられています。
金属製ベースは見ないわけではないですが比較的珍しく、モールドが入っているとさらに豪華な感じが出る、ということで、
少々手間とコストがかかっておりますが、このように仕上がっております。ベースの寸法は直径25oです。
造形としても「塗らなくても見栄えがする」ものにはなっているのではないかと存じます。
(特に塗る予定無い方にはゲンブンゲームズ様のみで販売される磨き加工のものもお勧めです)

ともあれ、ご購入いただいた皆様には「モデルとベースの接着」は行っていただきたく思います。



接着剤は、コンビニ等で売っている瞬間接着剤でも、「金属接着可能」なものであれば問題ありません。
写真はメタルフィギュアの愛好者には一般的なwaveの瞬間接着剤。何せパッケージに「金属最適」と書いてあります。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3...B001AV1I7C



開封したらおもむろにモデルの足の裏に接着剤を付け…、



ベースをくっつけます。撮影の都合で机に寝かせてますが勿論手に持って作業すればよいです。
ベースの裏側からも少しだけ(穴から漏れ出ない程度に)接着剤を注入します。
付け過ぎでほうぼうに接着剤が付くことにだけ気を付ければ、そう難しいことはありません。
あとこのモデルのベースは裏がちょっと上げ底、中空になっているので、
(一応紙か何かを机に引いた上に立てていただければとは思いますが)立てて乾かしても、下に接着剤が垂れて付く、
といったようなことにはなりにくいと思います。



瞬間接着剤、と言いますが、実際にはある程度時間が経ってから接着の強度が出るので、
(もの次第ですが、大抵のものは完全にしっかり付くのは数時間後、なんて話を聞いたような気がします)、
直立させた状態で30分ほど乾くのを待てば完了です。このミニチュアは3体ともベース上にまっすぐ立てるだけなのであまり心配は無いですが、
モデルが傾いた状態で接着してしまうようなことだけ気を付けていただければと思います。
常識的なことですが、たくさん接着剤を付ければしっかり付く、早く付くということはありませんので、付けるのは適量にしてください。
あと接着後すぐ触ってくっついているかどうか確認したくなってしまうものですが、
そういうことをするとモデルがあっさり取れて倒れますのでやめてください(笑)。
接着に失敗して取れてしまった場合、その上から直接接着剤を付けなおしてもう1回接着、というようにしたくなりますが、あせらず1回カッターナイフ等で接着剤を付けた面を掃除して、乾いた接着剤を除去してやり直した方がよいです。
(2回目も失敗してジリ貧、ということになりがちです)

…ということでごく簡単ながらモデルのご紹介と、接着についてのお話でした。
先日自分で塗装も行ったのですが、もしかしたら後日、その簡単な手順なんかもここに書くかもしれません。
その際は、「このくらいざっくりやるだけでもいいのではないでしょうか〜」というユルいお話をしようかなと思います。
塗装のお話は上を目指すと天井知らずで、その分敷居も高くなってしまいますので。怖い怖い(笑)。
気軽に塗れば楽しいものですし、私みたいにユルく塗っている人も多いものですので、そういうお話を、機会がありましたら!

 

 

 


[#7] 切り抜けて2月、そしてニューゲームズオーダーの8期終了。

2月が終わりますね。ということは2月決算のニューゲームズオーダー、2016年度(8期)が終わるということです。
ニューゲームズオーダーの現状を端的に申しますと、「切り抜けたー、一応!」というところです。
今期、売上は昨期と全くといってよいほど変わらず同水準でしたが、現状予想されている税金額は支払い可能な所にコントロールされ、
枯山水はじめほぼ全ての自社製品現行ラインナップの在庫があり、私や西山は投じていた資金を幾分回収できました。
売上横ばいと言ってますが、実質枯山水イヤーでパラノイア:トラブルシューターズもよく売れた2015年度と、
同じ売上が出ているのは結構頑張った感じで、一年通して全員下がって当然と思っていたので、
昨年末あたりに「8期どうも7期と同じくらいに落ち着きそう」という話題が出て皆「え、そうなの」と実感ありませんでした。

昨年の今頃は、こんなことを書いていた(んですね私)。
http://www.b2fgames.com/article.php?s...3190413639

そして16春ゲームマーケットをを終えて。
http://www.b2fgames.com/article.php?s...8122850430

1年通してあまりにもズタズタだったので何かそう表現することに抵抗が有ったりもするのですが、
今は「16年度開始時点の作戦立案は正解で、8期終わってみれば一定の成果が上がっていた」と表現できなくはない状況です。
序盤から中盤にかけてかなり大変で、終盤については(枯山水再入荷の為に)ほぼ地獄模様だったわけですが、
16年初頭の自分が考えていた通り、進むうえでは不可欠な地獄めぐりだったのだと思っています。

今はひと段落して全員で「2017年、どうしますか」ということを話しています。
2016年どうしてこうなった、という話になっていないというのは贅沢なことです。
昨年の今頃にはそれを念じつつ、でも年通して相当の修羅場になることも予想できていたので、…嬉しいです。
本日時点で、ようやく、2012年〜13年辺りからやってきた「メーカー」としてのニューゲームズオーダーを完成させられたと言えるからです。
50作ボードゲームの製品を作って、売って、持って、まだ立っているからです。
永遠の安定などありえないわけですが、もう1年くらいはおそらく立っていられる、という見通しが今あります。
ごく小規模ながらも、収益構造として一つ形を見たからです。これは私にとりニューゲームズオーダーにとり、初めてのことです。
あくまで自分としての判定ですが、出来る限り他にツケを回さず、自分達の活動を効率的に収益に変換するというのが、長年の目標でした。

ここまで何とか切り抜けた大きな要因は国内でのボードゲームの広がりと、その追い風をある程度はいただけたということだと思います。
(広がりのディティールについては皆様同様一部に思うことは無いでもない、という感じですが、大枠としては良いことと思います)
勿論追い風吹いたら帆に受ける気がある形を模索してきたのですが、よく見たら帆に穴空いてるわ、
ということにならなかったのは本当に良かったです。新たな所にボードゲームをお出しして収益を上げつつも、
元からいらした皆様のお役にも立ち続ける、という両方が今しばらく続けられるということですので。

17年は、西山しかり他のメンバーしかり、より自由にやれたらと思っています。
ここまで全員、少し捨て石になりすぎましたので(笑)。また近いうち、習い性で酷い目に会いに行ってしまいかねないですが、
近くで直に見ている皆様には「吉田さんも西さんも、報われなきゃ駄目だよ!」というご忠告をしきりに受けますので(笑)、
自分たちのHPでコストを支払うことは一区切りさせながら、平常の力で皆様にお楽しみいただけるようになれば、というのが、目標ですねえ。
ということで、2月終わりという中途半端なところでのご挨拶ですが、9期もよろしくお願い致します。

追伸:こんな話をしてますが、実は相変わらずゲームは(いくつか)作ってます(笑)。はーっはっは。

 

 

 


[#8] 木製塗装済情景模型「4ground」製品各種の予約発注受付、38日まで行っています。

http://frostgravejp.thebase.in/categories/180830
https://twitter.com/frostgravejapan

ニューゲームズオーダーのTwitterでもリツイートしてお伝えしておりますが、フロストグレイブ等ミニチュアゲームに使える
木製の情景モデル「4ground」製品各種の予約注文を、明日8日いっぱい受付しております。
よろしければ一度フロストグレイブ通販ページをご覧いただければ幸いです。

そもそも何故「4ground」のご予約を締め切り付きで募集しているかと申しますと、平常私達は4ground製品の中でも、
フロストグレイブに使いやすいのでないかと思われる「ヨーロッパ風の家屋」のモデルを数十点常備して取り扱っているのですが、
実の所4groundのラインナップは「数百点」あります。1つ1つ見ると「何コレ素敵!」というのがたくさんあるのですが、
数百点全てを常備することは流石に難しいのです。

難しいのですが、それでは取り扱わない方のものは「無いもの」としておく、というのはちょっと勿体なさすぎる。
そこで「常備在庫の追加注文の際に、欲しいものがあれば今注文していただければその分もお取り寄せできます」
という期間を作ることになったわけです。
数百のラインナップそれぞれについて、「これ、欲しい!」という方が、国内でもお一人なのかお二人なのかはいらっしゃるのではないか、
と思っておりますので、よろしければ是非この機会にご注文下さい。
自分達としては、必ずしもフロストグレイブ、あるいはミニチュアゲームを遊ばない方でも、
純然とアイテムとしてほしい方がいらっしゃるのでは…、という魅力があるものが多いです。

大げさなようですが「必要数1」を「ほとんど無いってことだから注文数0」にするしかない、という判断に、何とかメスを入れていきたいと思っております。
何せホビーの領域ですから「必要数1」ならば「注文数1」にさせていただき、ご入用な方にご満足いただいて私共の商業もはかどれば嬉しいです。
たくさんゲームを売るだけではなく、2017年はこういう柔軟さも、できる範囲で持っていければ。
と、いうことで、今回のご発注は明日いっぱいよろしくお願い致します。上手くいくようなら、数か月に1回のペースでやっていきたいとも思いますので!

 

 

 


[#9] 言わば、51個目のゲームを作っています。

気づけば4月!桜が咲いてますねえ。久しぶりにブログ更新と行きたいと思います。

3月から新たな期が立ち上がりましたが、この3月と4月は新たなリリース等無く。
一旦立ち止まって自社の販売状況を確認しています。感触としては全体になかなか良好で、
例えば1年前よりも「新製品が無い時」の販売力は上がっているかな、という感想を抱いております。
自分たちのラインナップ(特にロングセラーと言えるタイトル)が増えているということに加え、
やっぱり以前に比べて一般にボードゲームが浸透してきたからだと思いますけれども。
お陰様でまたペンギンパーティが売り切れましたが、4月末再入荷予定です。
あとおそらく4月中にコヨーテが売り切れるのですが、こちらは5月下旬再入荷予定です。
ホントにこの2タイトルがダントツで売れていくので、会社の基本としてこれらの品切れ期間を長く作らない、
ということには注意を払っていまして、半年前位から再生産の時期を話し合っていたのですが、今回は上手くいったかなと。
静かなレベルアップ。

少なくとも直近は既存ラインナップ、従来品の販売だけで会社を運営できる状況に入り、ようやく
「+αを狙って新製品の制作をする」という、言わば正常なパブリッシャーの状況に至れたので有難いです。
(と言ってもその新製品で何回か失敗すればすぐにその状況も失われてしまうんじゃないかと思いますが…)
5月ゲームマーケットでの発売に向け新たに2つ、ゲームを作っています。
勿論ゲーム作り自体の苦労はありますが、「これが売れないと即立ち行かない」という状況では無いので、
思い切って良いと思うように作っておりまして、楽しいですね。
…ま、良いと思うように作ったものが売れればホントに言うこと無いんですけどね(笑)。
もうしばらくしたらご案内できるかと思いますので、その際はよろしくお願い致します。

 

 

 


[#10] ゲームマーケット2017春にて、第2回東京ドイツゲーム賞最終候補作品「ハツデン」を発売します。



タイトルの通り、5月14日に開催されるゲームマーケット2017春のニューゲームズオーダー新製品として、
第2回東京ドイツゲーム賞最終候補作品「ハツデン」を発売致します。

http://www.newgamesorder.jp/games/hatuden

●昨秋のゲームマーケットで「TOKYO HIGHWAY」を発表されたittenさん作の2人用カードゲームです。
http://www.itten-games.com/
●価格は税込1800円です。
●「ペンギンパーティ」「エスカレーション」同様、「ゆかいなさかな」さんに協賛をいただいた製品になります。
●ご興味ある方は、東京ドイツゲーム賞の審査動画もご参照ください。

https://youtu.be/O65f1YqQoNg
https://youtu.be/ZiJhFFwCaas

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて!昨年12月に発表させていただきました第2回東京ドイツゲーム賞から、まず「ハツデン」を発売させていただくことになりました。
いやー。有難いです。

同賞の最終候補作については、「できるだけ製品化してプレイヤーの皆様にお届けし、遊んでいただけるようにしたい」
という旨のことを、最終審査の際に申し上げました。
しかし商業ベースでゲームを出版する上では、当然ながら様々な課題があり、またご応募をいただいた作者の皆様にも個々にご事情があります。
その中で、各作品、どの程度まで製品化を実現できるのか…、と、結果発表の直後から思案しておりました。
結果としてこの「ハツデン」から着手させていただこう、と決めたのは、

…逆説的ですが、「ハツデン」が受賞を逃したからです。

と書くと「アナタ審査員でしょ!」と言うツッコミが方々から入りそうですが(笑)、言われても正直仕方が無いと思います。
受賞作とはできなかった以上、このゲームをニューゲームズオーダーから出せるとすれば、最初に着手するしかないなと。
それ程に、このゲームに何らかの賞をお贈りできなかったことには、一口に言って心残りがありました。


今回の東京ドイツゲーム賞の最終候補作は本当に甲乙付け難く、一同嬉しい悲鳴を上げました。
各賞を選出する段となって、最後の最後で、自分達が元来「3人以上の駆け引きのゲーム」を大事にしてきたこと、
そして東京ドイツゲーム賞は自分達の価値基準を表明する賞であるという成り立ちに、ごく僅かな差を見出すより他ありませんでした。
ハツデンが受賞を逃したことにはそれ以外の理由は何らありません。
最終審査の大詰めの話し合いで、タナカマさんは「ハツデンも大賞候補ですよね」という旨のことを念押しされましたし、
沢田も「今回最大のサプライズはハツデン」と言っていました。
いやあ、だってねえ。面白いですからねえ。

第2回東京ドイツゲーム賞作品の製品化を始めるにあたって、「大賞作品である「グラバー」から着手すべき」
という考えは当然あったのですが、一方で「グラバーを出したら、言わば『上から』『可能な範囲で』出す」ということになり、
結果としてはそう多くのタイトルはリリースできないことになるだろうな、という認識を持っていました。
その為、(柄にも無く悩んだのですが)グラバーの作者である赤瀬さんにご相談差し上げ、グラバー出版についてはお時間をいただくことにしました。

加えて、ハツデンについては、非常に手軽で遊び易く、それでいてゲーマーも満足させる内容を持っていることから、
「ペンギンパーティ」以来折に触れ出版にご協力をいただいている「ゆかいなさかな」さんに協賛を打診させていただきました。
「ゆかいなさかなさんのお眼鏡にかなうなら、ニューゲームズオーダーの正規ラインナップとして、出版に踏み切ろう」
というトライアルをさせていただいた形です。
結論としては良いお返事をいただけ、このように本日発表できることになりました。

ハツデンを作ったittenのお二人とは第2回東京ドイツゲーム賞の最終発表の直後に開催されたゲームマーケット2016秋の会場で初めてお目にかかりました。
その際はittenさんはゲームマーケット初出展で、TOKYO HIGHWAYがいきなり話題を呼んでいたので非常に驚きました。
ルール・コンセプトを担当された島本さんも、アートワークをご担当の富岡さんも、
アナログゲームの制作という点では新規参入ながらも、一見して「プロフェッショナルだな」と感じさせる方々でした。
そればかりではなく、ゲームをお作りになり、ブースを出され、ということ自体を非常に楽しんでいらっしゃることを感じました。
それもまた、自分の中で「ハツデンはやっぱり出したい!」という気持ちが高まる要因でした。

ハツデンのアートワークは応募時点で高いレベルにあり、製品化にあたってはそれをブラッシュアップするという作業でしたが、
短期間ながらも侃々諤々とし、相応に苦しみもあり、その分も達成感もあり、密度の濃い制作が行えたと思います。
お二人とも遠方から何度となく立川までお越しいただき、その熱量について私少々気圧される程でした…、
と書くと近い皆様には伝わるかと思います(笑)。

弊社ウェブサイトにはルールPDFがアップされていますので、気になる方はチェックしていただければと思います。
ゲーム内容は、「バトルライン」や「ロストシティ」のようなベースのゲームと言えば詳しい方には伝わるかと思いますが、
そこに「横軸」の概念を持ち込むというシンプルなアイデアが大きな効果をもたらしています。
このゲームが持っているリズムや、手番ごとにプレイヤーにもたらされる悩みの質・量の「ちょうど良さ」、
2人用ながらワンサイドになり難い展開、それらの調和から来る爽やかさは、生半可には得難いものです。
これこそ多くの方に求められる2人用ゲームなのではないかと。
手軽さ・便利さと面白さの融合が本当に素晴らしい。
ボードゲームをやったことの無い方に初めてのゲームとして一緒に遊ぶのも、ハツデンは良い選択肢になり得ると考えています。

このゲームは相当凄いのではないか。というのが私の偽らざる本心です。
枯山水や曼荼羅の時同様、オリジナル新作である以上、外に根拠を求められないのですが、
極力客観的な立場で申し上げて「買った方が良いと思います」という感じです(笑)。
当日はニューゲームズオーダーブースだけでなくittenブースでも販売予定です。
ゲームマーケットの会場や打ち上げの場などでの1ゲームとしても、とても遊び易いゲームなので、
本当に心から、ゲームマーケット土産として、当日のご購入お勧めです。

このゲームで第2回東京ドイツゲーム賞製品化の趨勢、占おうと思っております。皆様、よろしくお願い致します!

 

 

 


[#11] 「六次化農村」をゲームマーケットで発売致します。



さて、ゲームマーケットカタログ発売にあわせ、昨日Twitterにて発表させていただきましたが、
東京ドイツゲーム賞の審査員特別賞受賞作、「六次化農村」を、5月14日、ゲームマーケットにて発売させていただきます。
ゲームマーケットでの販売価格は6500円を予定しております。

↓弊社ウェブサイトにてルールブックのPDFをダウンロードできます。
https://sites.google.com/a/newgamesor...s/rokujika

↓youtubeにある六次化農村の審査動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=XOzz2QLnbvI
https://www.youtube.com/watch?v=krkGwdCfKro
https://www.youtube.com/watch?v=510RkTvMEuE

本製品につきましては、現状の生産数が通常のニューゲームズオーダー製品に比べ少数(500部)となっている為、
近日中にご予約を受け付ける予定です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて。さて!ニューゲームズオーダー春の新製品、もう一つは六次化農村でした。
…こちらについては、言いたいことがあり過ぎます!先日発表したハツデンは、(相応の苦労はありつつも)優等生と言えたのですが(笑)。
長時間ゲーム守備範囲だぞという方は、まずは六次化農村のルールPDFをご覧いただき、
また東京ドイツゲーム賞の一連の審査動画をご覧いただければと思います(長いのでなかなか全部はチェックし難いかと思いますが)。
率直に申し上げて2017年体制のニューゲームズオーダーで、「これホントに出すの!?」と思われそうなタイトルですねえ。

えー、お話を始める前に、要素を思いつくままに箇条書きしておくと、

・「長時間ゲームの商業的な位置取りと販売」
・「長時間ゲームのアートワーク・コンポーネント」
・「500部製造の枠組み」
・「ボードゲーム出版という商業」

とまあこんな感じでしょうか。ホントに全部ご説明できるかどうか、そういう内容になるかはわからないのですが、顛末から始めてまいりましょう。

この「六次化農村」、作者は神田恒太郎さん。ゲームマーケットでは常々ブースを出されている「ホリケン」さんと言えばご存知の方も多いかもしれません。
「円卓P」さん名義での動画配信でも知られている方です。
(ニューゲームズオーダーの製品ということで「様々な売り場に並ぶ可能性を一応見て普通めの名前にしていただけますか」というお願いをし、今回は神田さん名義となりました)

私としては面識は無かったのですが、ネットで時々見かける「ドイツボードゲームに詳しい方」だな、という印象でした。
ですから、(これは審査中も繰り返し口にしたのですが)
「エッセン新作等最新ゲームをチェックしている熱心なプレイヤーの方々の中には、『いっそ自分で作る』『作れる』という方もいるのではないか」
という興味が強くあり、一次の書類審査から期待させていただいた候補者の1人でした。
実際お送りいただいた「六次化農村」の書類には見るべきところが多々あり、また私以上に(同じく審査員の)沢田が評価し、
二次審査(サンプル提出による実プレイ)に進んだ、という形でした。

二次で遊んだ際の私の評価は、可否両面ありました。可の方で言えば勿論、「2時間級の農業ゲーム」
という真正面からの目標に挑み、既存のボードゲーム、特にゲーマーズゲームの文法に対する造詣の深さをバックグラウンドに、
新たに遊ぶ価値のあるゲームを作り上げたことに対する敬意、感謝、喝采、といった思いでした。
率直に言って「凄い、こんなゲームを作れる人が国内にいるなんて」と。

しかしながら、否の面も大きくありました。
神田さんが送ってこられたプレイ用サンプルが、「長時間ボードゲーム」のコンポーネントの想定として不十分なものだったということです。
一次審査通過から二次審査用のサンプル提出の期間が短く、難しさがあっただろうことを勘案しても、他の候補者に比べて、
ビジュアル面があからさまに弱かった。プレイヤーが情報を処理しやすいように、ゲームの魅力を落とさないように、という心遣いには欠けていました。
そういった意図は…できれば持っていて欲しい。長時間ゲームを作るならば尚更です。
ルールだけ書いて後は他所に任せる、という態度は、(例えばクニツィアのような)ごく一握りのトップデザイナーなら許されるんじゃないかな…、
というのが、私の思う所です。どういう風にゲームに魅力のある実体を与えるか、発想する上では、
ゲームの作者が最も有利なポジションにいるのは明らかだからです。

ボードゲームの制作をする時、「ルールを書く人はルールのことだけ考えればよい」
「絵を描く人は発注通りの絵を描けばよい」というシンプルな分業は、そう容易にはまかり通りません。
制作の参加者各人に、他のパートへの心配り、互いの連携を高めようという心が有ると無いとでは、出来上がりは天と地ほども違ってきます。
というより、特にボードやカード等コンポーネントに多くの情報が盛り付けられる長時間ボードゲームにあっては、
この連携は「製品完成の為の前提」にすらなり得ます。そもそもプレイヤーの皆様にお届けすること自体が危ぶまれるということです。

ということで「ゲームとしては面白いんだけど、これ本当に作るとなったらどうすればいいんだろう…」と、
憂鬱になるような側面を持っていたのが、六次化農村でした。

それでも進んだ最終審査では、ご存知の通り多くの傑作に恵まれた中でも、こと六次化農村については、
その最終局面まで沢田が「自分としてはトップマーク」という態度を貫いたことで、
「審査員特別賞」を(にわかに新設して)お贈りする形に決着しました。動画中も言っていますが、これは言わば「沢田賞」です(笑)。
正直に申し上げてこれは(最終候補作品を数多く出版したいと考え始めていた)私にとってもたいへん都合が良い結末でした。
まあつまり、このゲームの最大の弱点と確信していた「コンポーネントへの落とし込みがし難い」という部分、
沢田くんがやってくれるってことだよね!という持って行き方ができましたので(笑)。

沢田は何せ趣味の人なので、ホントに出版するかどうかは一回置いて、コンポーネント改善案については早速着手してくれました。
上がってきたラフは身内ながら「流石に沢田」という感じで、相当健闘しているものだったのですが、
他方(避け難いこととして)依然として相当の課題を積み残しており、
自分がしていた「六次化農村の出版については楽できるかな…」という淡い想定は脆くも崩れ去りました。
沢田及びDTP・イラストを担当した新規スタッフ西村共々、悩みまくり、手間かかりまくりの総力戦に突入することになりました。

3月には神田さんにも弊社までご足労いただき、沢田共々製品化に着手したい旨と、どういう製品づくりをしていくかというお話合いをしましたが、
正直私の予想通り神田さんにはアートワークやコンポーネント方面の具体的なご想定はほぼ無く、
膝詰めで話すのは初めての状況ながらも、私は相当苦言を呈しました。
終わった後神田さんは「…気合い入れないとやばいっすね」と仰ってましたが、あの腹を割った話し合いを持てたことが、
六次化農村の完成形に繋げるための、起点になったと思っています。
やっぱりゲーム作りには、そういう修羅場が必要なのかもしれません(笑)。

また、その話し合いで私が「春のゲームマーケットで出すつもりです」ということを申し上げた際には、神田さんは「春!?秋じゃなくてですか?」
と相当驚いてらっしゃいましたが…、申し訳無いですが、私達にはそんなに気長に一つのゲーム(しかも長時間)を作っている余裕は無いのです(笑)。
ただ(沢田は違いますが)私達はフルタイムでゲームを作る時間があるので、本気で、本気でかかれば不可能ではないと、そう考えていました。

そこからの制作は、厳しくも楽しい物でした。
ルールについては、パッケージ通り神田さんの作となっていますが、考えようによっては神田さんと沢田の共作としても良いような過程を経ました。
特に3人プレイのルールは沢田が大きく関与しています。あとカードの効果等、端々については私の案を採用してもらったところもありますね。
デベロップメント、という観点でいうと、沢田がやるという形から出発しましたが、まあやはり私の仕事も多々有り、2人でやった感じです。
アートワークについては西村が絵が描けるため担当してもらいましたが、どういったものをどういう風に描くかについては私が考えたもので、
DTPについては沢田の意図を受けて西村がやる形だったためやはり共同作業。
ルールはニューゲームズオーダーの平常と同じく、沢田が書いたものを私と校正の山根が揉んで西村がDTPをする、という形になりました。
そして今、製造担当西山が、タチキタプリントで受けている他の作家さんたちのゲームと共に、生産を進めています。
大きなトラブルに見舞わなければ、ゲームマーケット、間に合う運びです。


…本当に、神田さんと沢田の間で密に連絡を取ってもらいながら、フルタイマーの自分たちがぐいぐい進め、入り乱れて作りました。
てんやわんやだったのですが、具現化しにくい難物をものにした分だけ、魅力的なゲームに仕上がっているのではないかと、今は思っています。
現状のコンポーネントでテストプレイをした際、各段にゲームの魅力が増していると感じられ、自分達で驚きましたので(笑)。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

たいへん長いんですが、一気に書きましょう。
そもそもこのゲームをニューゲームズオーダーのラインナップとして「今出せるのか」という点。
どうして出せるのか、ということ。
それはことによれば、ゲーム自体の制作以前に、昨年1年を要した、自分達の商業のテコ入れに起因します。
これを今出せるということは、むしろ今でなく、苦しかった過去の自分達の活動、それがどういう成果を見たのかが測られる
ということだと考えています。

最初に書いた通り、6500円のゲームとは言え、六次化農村は500部しか作っていません。何故500部なのか。
それは昨年の活動を通じて痛感した、長時間ゲームのリアルな状況の反映です。
今日本で、ボードゲームを遊ぶ方は、過去に例が無い程に増えました。有り難いことです。
お陰様で、繰り返し言っている通り、最近コヨーテやペンギンパーティが驚くほど売れます。

それでは他の多くの、「平均的な」ゲームがどうなのか。
…以前よりは売れます。しかし、率直に言って「微増」という範囲です。
想像に難くないことですが、新たなプレイヤーが増えるということは、大方「新たなプレイヤーが求めるゲームは売れる」ということです。
このことについて、自分達は特段悲観するような気持ちは持っていません。それはそうだ、と思います。
自分達のようなマニアにとっては見知ったゲームでも、新たにやる皆様にとっては、その1つ1つが新しいゲームだからです。

「商業」ということを、短期的な観点から考えた時、「大箱の」「複雑な」「長時間の」ボードゲームをたくさん作って売ろう、
と考えるのは、…ごくごく控えめに言ってリスキーです。
カードゲームが、上手くいけば数か月で数千部売れていく一方で、
長時間ボードゲームの国内流通の適正部数は…、今なお500部から、良くて1000部という所ではないか、というのが私の雑感です。
売れ残ったボードゲームは、会社の財務も倉庫も大いに圧迫しますから、
「出来心で」「思い入れで」作り過ぎた大箱ゲームは、将来的に、コヨーテやペンギンパーティや、モダンアートやラーや、
そういった「広く求められ続けている」定番タイトルの供給に支障をきたす要因になる。

これは本末転倒だ。と考えよう。ということを確認し、決意し、舵を切ったのが、私達にとっての2016年でした。
相応痛みを伴いました。しかし枯山水を始め、ラインナップについて軒並み再生産を続けながら、今は堅調に売り上げを出せるようになりました。

その上で、新規開拓として、新作ゲームを作る。東京ドイツゲーム賞のゲームも出す。収益も上げる。つまり仕事としてやるということです。
六次化農村というゲームにこれだけの力を注ぎこめるのも、以前よりは遥かにましになった、会社の収益力の裏打ちがあります。
そして「500部で作れる」「コストを収めて生産できる」ようになった西山の仕事の進歩に、基礎を置いています。
今年に入るまで不可能だったことが、今静かに可能になりつつあります。その静かな進歩を用いた挑戦が、六次化農村です。
だから、このタイトルには、商業的な社運は、賭けていません(笑)。
ようやく、毎度の博打を行わずに、会社が続くようになりつつあります。
しかし、やっぱり大事なものがかかっているということです。

今回の六次化農村については、500部が飛ぶように売れるようなら、増産を考えます。
しかし、500部で終わりにするオプションも持っています。買う皆様にとってはジレンマがあるかもしれませんが(笑)。
しかし煎じ詰めれば、これが現状最も望まれている形だろうと思います。
自分としては…要る方は買っておいた方が良いと思いますよ(笑)。
世界で500部のみになる「可能性がある」ゲームということです。


全力で作りましたので、良い物だという確信は、一同得ています。
しかし、売れるのか、売れないのかは、正直わかりません。
だから、値段も収めながら。中身もしっかり良いものにしながら。在庫は余らせない。通常業務に支障を来さない。
需要が高まれば速やかに増産する。

そんなベースを作って、思う様、良いと思うゲームを作れたらと、そう思っております。
そんな仕事が出来たらね。夢ですね。
どうだろう。上手くいったら良いですね(笑)。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ということで、今までは行ってこなかったのですが、今回はゲームマーケットの販売についてご予約を取る予定です。
買いたい人が、今ならば問題無く買える、ちょうどいい量の生産、それを測る為の一環でもあります。
通常ラインナップと違い、長期に渡っての供給をお約束できるものでは必ずしもないですから、ご入用な方はこの機会に、ご予約いただければと考えております。
詳細については近日Twitter、こちらのブログ、ニューゲームズオーダーの公式サイト等でお知らせします。

要るものを、要る数だけ、上手く受け渡す。
良い形で継続する為の試みということですので、皆様どうぞ、ご協力をお願い致します。

 

 

 


[#12] 「六次化農村」ゲームマーケット取り置き予約を受け付けます。



先日発売を発表しました「六次化農村」(GM販売価格6500円)につきまして、下記の通りゲームマーケットでのお取り置き・ご購入の予約を受け付けます。
ご予約締切は「5月12日23時」です。
※ご予約多数の場合、予定より早く受付終了となる可能性がございます。

[ご予約の手順]
●yoshida@b2fgames.comまでメールをお送りください。メールのタイトルは「六次化農村取り置き予約」としてください。
●メール本文に
・「お名前(本名、フルネーム)」
・「お電話番号」
・「ご予約個数」
をご記入ください。
※ご予約個数の上限は「2個」とさせていただきます。
※「ハツデン」等その他の製品についてのご予約はお取りしません。当日販売分よりご購入下さい。
●ご予約を弊社にて受け付けましたら、「ご予約番号」を記した確認メールを返信します。
●ご予約メール送信後数日経っても(もしくはゲームマーケット前日21時までに)弊社からの返信が確認できない場合、ご予約メール不達の可能性がございます。042-507-8120までお電話いただきご確認ください。

[当日・会場での購入]
●「ニューゲームズオーダーブース(A45)」で販売します。
●ご予約をしているお客様は、その旨をスタッフに明確にお知らせください。
●お引渡し円滑化の為、当日ブースにて係の者にメールでお知らせする「ご予約番号」を「フルネーム」と共にお知らせ下さい。番号を記録して当日お持ちください。
※ご予約番号をお忘れの場合、名簿でのお探しに数分お時間をいただく可能性がございます。
●お支払いは会場にて商品受け渡し時、現金でいただきます。事前お支払いは受付致しません。
●ご予約の引き取りは「14時」までとなります。14時までにお引き取りにお越しください。
※14時を過ぎた場合ご予約は解除となり、その分は一般販売分に回す予定です。出来る限り時間内にお越しください。時間を過ぎた場合は一般販売分をご購入下さい。

以上の通りです。
なお、ゲームマーケット以降、通販・一般出荷については、当日の販売状況から検討し、できる限り早くお知らせします。
皆様のご予約をお待ちしております。

 

 

 


[#13] 面白いと確信してるゲームの準備は、苦労があっても幸せな作業。

と思って頑張ろうと。それが原動力になるのでございましてー。

気が付いたら4月も終盤、でゴールデンウィークも目前ですねえ。最近の私共は、日夜粛々とゲームマーケットの準備を進めております。
(勿論ゲームマーケット後のことも色々やっておりますが)
特に製造方の西山に大きく負担がかかるフェイズになっており、自分はつとめて通常運行ですけれども。

ニューゲームズオーダーとしてはゲームマーケットでのリリースを発表した、ハツデン、それから六次化農村が最終段階です。
今回は珍しく、随分前に原稿入稿済みのゲームマーケットのカタログに載せていたこともあり、カタログの発売にあわせて発表しました。
これは普段よりは相当前倒しになっておりまして(普段ならGMの直前、1週間前位の発表になります)。
そのデメリットと言うのは何といっても、「ほんとーの本当の所はまだ無事に出せるという確信に至っていない」ということです。
だってねえ、今もって現物の在庫、目の前に無いですからねえ。
私や西山としては、目の前に販売する現物が最低限必要な量来て、自分達で目視確認して、
「うーん、多分大丈夫じゃないでしょうか…」というとこまで来て、ようやくうーん発表しましょうかあ(この後トラブル発覚したりして…)、
というのが偽らざる本心ですので(笑)。実際空約束しちゃってるかもしれない感が強い。

というところで平然としながらも毎度の戦々恐々なのですが、ここに来て、ハツデンが海外からの輸送中のステータスになり。
六次化農村のピースが九分通り揃い。最後のハードルだった木製駒類が明日税関に着荷との知らせがあり。
製造系のトラブルが無ければ、何とか出せる方向に寄ってきています。ぜんーぜん安心できる状況ではないですが、
今の所コケてないのでそれは良かった。
西山はあわせて30件ばかりのタチキタ受注製造業務をやっているので、ホント想像を絶する感じになってますが、
それも、何とかジリジリ前進できてる模様です。まあ、ざっくり言えば、これは…順調ということですな。
明確にアウトなトラブルが起こってなければ順調(笑)。六次化農村のセットアップに際してちょっとしたイレギュラーが起こって、
今店番しつつブログを書いている私以外の他のスタッフはそのリカバーの作業に着手しておりますが、順調順調!

六次化農村についてはお陰様で着々とご予約もいただいております。
まだ期間はありますが、ゲームマーケットへの持ち込み計画も立てることができるので、(流石に六次化農村は大箱ですから)助かりまーす。

六次化農村は、自分は疑いなく面白い、相ー当面白い2時間ゲームだと思いますし、
紆余曲折ありましたがかなり遊び易い出来上がりになりかけてる所なので、自分たちが当初想定していたより広範囲の皆様に遊んでいただけるのではないかと、
遊んでいただけたら嬉しいなと思っているので、…これも順調ということで。
リリースまでまだまだ仕事はたくさんありますが、一同楽しく厳しく進めてまいりたいと思います。
ご購入予定の皆様におかれましては、ハツデン、六次化農村の無事をお祈りいただきつつ、今しばらくお待ちいただければ幸いでーす。

 

 

 


[#14] B2Fゲームズ店舗臨時休業日程のお知らせ

5月のB2Fゲームズ店舗は、月曜日・水曜日の定休日に加え、

5/14(日)
5/28(日)

を臨時休業致します。お手数ですが、ご来店の際はご確認をお願い致します。

 

 

 


[#15] ゲームマーケットで「六次化農村」をお買い上げの方に、ルールブックを「追加で3部」差し上げます(先着順)。



ゲームマーケットまで、あと3日!というところなのですが、ニューゲームズオーダーの準備は微妙〜に済んでおりません。
と言いますのも、六次化農村500部は国内製造で内容物も滑り込みで準備完了したため、
お久しぶりの自社詰め込み作業となっております。
ぎりぎりだったから、というのは理由の半分で、勿論500部製造で予算が限られ、でも内容物多いし、
さりとてできる限りクオリティは保ちたいし、というところで、「まあ手間持ち出しですが皆で詰めましょおか」
ということでスタッフ一同納得したというところもあります。ゲーム作りでディフェンシブと言っていい計画を立てた時、
「予算限られるから価格上げる」「〜から内容物減らす」「〜からクオリティ下げる」「〜から儲け減らす」
みたいなところから組み合わせで選択しなければいけなくなりますが、この選択において他よりしぶとく踏ん張って良い物作れますぜい、
というのがニューゲームズオーダーの一つの腕の見せ所だと思うので、手詰め位は…致し方なし!しかし内容物多いですなあ…(笑)。
大箱なもので、作業時間もかかるし作業場所もえらく要ります。西山中心にスタッフが連日やっております。
ただ自分達で手で詰めていても、満足感のあるボードゲームになっているんじゃないかな〜と感じられているので、
きっとご購入の皆様に楽しんでいただけると。多分私が一番期待してます(笑)。最後は時の運ですがねえ。

で、本日の表題なのですが、「六次化農村」のルールブック冊子につきまして、実は製造過程で1回全部刷り直ししました。
これは中身の間違い等が理由ではなく、「印刷に利用した紙がちょっとだけ薄かった」というのが原因で。
「時間もあるしもうちょっと厚手の紙で刷り直しましょう」というお話になった結果、
ルールを見る分には問題の無い(ちょっとだけ紙が薄い)ルール冊子が500部生じました。

どう使おうかなあ、と思っていたんですが、ここはゲームマーケットの当日販促用に、

●六次化農村ご購入の方に追加で3部差し上げる(4人プレイの場合全員ルールブックを見られるようにする)

ということにします。
ご予約等関係なく当日ブースで六次化農村をご購入の方に先着順で差し上げますので、予約済みだよー、という方も、
+3部あった方がいいかなという方はちょっと早めにお越しください。
PDFで十分だぞという方は後回しでも大丈夫です…ご予約されたことを忘れないでいただければ(笑)。

と、本日はそんな所です〜、と言っているところで、倉庫から「ハツデン無事入荷」の報。よかった間に合った〜(笑)。
引き続き一歩一歩、準備を進めてまいりまーす。

 

 

 


[#16] 少しの時間、待ち。

ゲームマーケット、お疲れさまでした…といったようなことを書こうー、と思っている内に、気づけば2週近くが経過し、もう5月も下旬。

遅ればせながら、ゲームマーケットではニューゲームズオーダーのブースに多数のお越しをいただき、誠に有難うございました。
本当にかつてない程終日お客様が多く、全員割と一日中てんてこ舞いでした。
ハツデンも六次化農村も結構余裕な量を想定して持ち込んだのですが、結果はどちらも完売という形で。嬉しいことです。
ニューゲームズオーダーとして、ゲームマーケットで過去最高の売り上げ(それも過去を大幅に上回る形で)となりました。

オリジナルのゲームがこれだけゲームマーケットで売れるようになったのか…、という感慨があります。
シンプルにご来場の方があれだけ増えたから、ということもありますが、
海外のゲームと比較しても引けを取らないゲームが出てくるかも、というご期待をいただいている、ということでもあるかなと。
そうだとしたら、嬉しいですねえ。という思いと共に、何か他人事のような驚きがあります。日々割と平然とした顔してますが、驚いています。


ゲームマーケットが終わって数日は、当日の多忙から私と西山は全身筋肉痛という状態だったのですが(笑)、ここの所は何とか体調も戻りまして。
春ゲムマを乗り越えたのでニューゲームズオーダーとしては一旦落ち着き、
ワンフェス出展ですとかそういったアディショナルなものにも力を向けていきたいね、という話をしています。

…と、言いつつ4〜5個のボードゲームの制作の課題が私の眼前にあります。嬉しいことであり、厳しいことでもあります。
自分が今思っているのは、何かわからんようなことを言いますが、この1つ1つについて「易く作ってはいけないな」ということです。
自分としては、今春「ハツデン」と「六次化農村」に、相当力を傾けました。それが何とか形を見て、売り出されて、お楽しみいただけてもいる模様で。
さらに言えば「ハツデン」にしても「六次化農村」にしても既に黒字化できている。贅沢な所に持ってこれたものだと思います。

ただ、5年間にわたってゲームを作って売ってまいりまして、目標だった「50作のラインナップ」も実現できた今でもなお、
ゲーム作りが簡単になったことは全然ありません。有体な表現になりますが、1つ作る度に、情熱を湧きあがらせて、全力で力を傾けて、
それで皆さんにお楽しみいただけるか、果たしてどうなるかと、結果を1つ1つ見て、考えて、また作っています。

ただ今は、自分の心に次のゲーム作りの火が立つのを、自分で待っている状況です。
話が生じているからと言って、着火しないままに手掛けてしまうと、出来上がったゲームから、
そのことはプレイヤーの皆さんに必ず伝わってしまうと、そう思いますので。

このブログが言わばスイッチでして。
これを書き終えたら、そろそろ本腰で1個1個のゲームを見て、自分の心に火を呼びたいな!と思っています。
立たないうちは、動かないつもりで。ああ、このゲームを皆さんに楽しんでもらいたいな!また良いヤツを作ろう!
という気持ちを、少しの時間待ちたいと思っておりますー。
少しの時間というのは、数週間という気もしますが、あと30分くらいのような気もします。

 

 

 


[#17] 高望みの時間。

6月。ということでー、新しいゲーム作りにスタートする時間が始まり、どこから手を付けようかなあ、と思案しているところです。
…というと誤解を生みそうですが、実作業的には既にいくつかのゲームの制作が並行して進行中です(笑)。
既に実作業を進めているのに「どこから手を付けようか」とは、どういうことなんじゃいと。

10年前、もしくは5年前と比べても、現在の私どもは「ボードゲームやカードゲームを出そうと思えば一応出せる」有り難い状況に至っております。
5年前、2012年の春にファブフィブを出したあたりでも、カードゲーム1つを商業ベースで出版し、販売し…ということは私達にとり「冒険」でした。
契約のこともそうですし、翻訳も、アートワークの依頼も編集もそうですし、何より海外での製造は五里霧中の手探りでした。
それに輪をかけて、国内でそのゲームの魅力を訴えて、販売していく、流通させていくということは、はたして何をどうすればよいのかわからず、
途方に暮れるようなことでしたし、成功どころか成立も保証されておりませんでしたので。まさしく「出たとこ勝負」でした。
この活動でまともに仕事になる、給料もらえる日って来るんだろうか、…というか普通に考えたら来ないですよねコレ、という船出でした。

2012年にニューゲームズオーダーのメーカーの動きを本格化させた時、自分達の何よりの持ち物はこの「問題意識」「危機意識」だったと思います。
つまり、「このままじゃお話にならんぞ」という認識を自分が持っていて、社内の各人もそれを十分に共有してくれたということです。
上に書いたような、ゲームを作って売ってお金を稼ぐ、という活動の全方位で、何とかできる限りは出来を上げていって、
それが成し遂げられた後で初めて「仕事になるのか、ならないのか」ということが計れる…くらいの状態だなあと。
漫然と続けるだけでは思い出作りの範囲を一生抜け出せんぞこれは、という意識から、手あたり次第に、
走りながら色々改良していって、ごろごろと転げまわって、何とか今の状況です。
5年前の惨状を考えると、避け難い紆余曲折を経ましたが、一応何とかなりました。良かった。

そして2017年の周辺状況を見ますと、(比較してということではありますが)なかなかボードゲームがたくさんある、常に色々出てくる世界になりました。
ただ、玉石混交と言いますが、実際玉はやっぱりなかなか出ない、のが難しいところです。
ともすれば、「そんなにたくさん石必要かな?」と思われてしまう位だと思います(笑)。
タイトルが多すぎて、新たにボードゲームやってみようかなという方が、ちょっと混乱してしまいそうな状況になってるかなと。

今自分が思うのは「ゲームを出す」ということ自体は、冒険ではなくなったな、ということです。
この「ゲームを一応出せるようになった」上に「もうボードゲームが溢れかけてる」ような状況で、
敢えてまた1つゲームを出すのであれば、「それにどういう意味があるのか」ということを一層問われるということかなと。そう理解しております。

だから、今まで以上に。「それは、こういうことです」と理由を申し上げたとき、
一定皆様から歓迎していただけるように、ゲーム作りをやっていかなきゃなあと。
そう思いつつ、今年中に出したいと思っているいくつかのゲームのことを考えております。

「1個加える」ことへの意味を考えながら。
そこに思い至らなかったら出しちゃダメ、くらいのものを自分達に課してやっていこうと思います。
最初に書いた「手を付ける」というのは、形としてはボードゲームの、製品の体を成しつつあるものに、
さてどういう意味を託そうかな。託せるかな。どういうものにできたら、皆さんが喜ぶかな、面白いと感じるかな。
ということを本気で考える、といったような意味合いです。
皆さんが、次に欲しいゲームって、例えばどんなものだろうか。今目の前にあるこれは、どうやって打ち出したらそういうものになるのか。

曖昧としてますが、それを考えるのが私の仕事のかなりの部分を占めています。
自分の中で「これは、喜んでもらえるんじゃないかな!?」という、確信めいた感覚が必要かなと思っております。
プレイヤーの皆さんのことや、作者の方やお取引先や、関係各方面のことを思い浮かべながら。
皆さんが「お、いいじゃん!」と思ってくれるようなもの。できるかぎり、良いことずくめのもの。そういう高望みが、私の仕事です(笑)。

 

 

 


[#18] 6月、つつがなく完了。

おお、6月終わりですねえ。今日なんかホント湿気が凄くていやになっちゃいますけど(笑)、
ニューゲームズオーダーは今月も売上堅調でございまして。何よりです。
今月と言えば、

・新製品ゲーム2個の制作が進行中
・同じく着手しなければいけないゲームが4個ペンディング中(上記2個は大事なので仕方が無いと言えばそうなのですが、ヤバいはヤバい。ヤバい。)
・新規ボードゲーム系翻訳書籍進行中
・パラノイア「フラッシュバックス」進行中
・フロストグレイブのエキスパンション類進行中

という感じでした。あと平然とした顔しながらなんですが、

・倉庫スペースを2倍弱に拡張(コストは1.5倍)

という新イベントが粛々と。物流方広瀬待望のー、という感じです。
場所としても同一テナントの横が空いたのを借りるというNGO的通常運行なので、効率問題はほぼ生じなさそうなのは幸運。
例年ほどの物量増大は無いので、倉庫スペース問題は複数年単位で解決を見た気がします。
当面スペースの余裕もがっぽりあるので、そこを使った新展開、新業態なんかを考えるのも楽しみ。

販売方面では、ハツデンが1か月で手元から3000部売り切れたのが今までで最速という感じで。
ゲームを遊んでくださる方の広がり、変化を感じますねえ。既に増刷をオーダーしているのですが、
ちょっとギャップが生じてしまった…のは想定していたより好調だったからなので、嬉しい誤算です。

7月も引き続きやれる限りを楽しくやって参ろうと思います。
この数年夏場は制作と、立体系のイベント出展なんかを動かす時間と位置付けているので、ここで頑張って、良い秋をまた迎えたいもんですね、
ということで来月もよろしくお願い致しまーす。

 

 

 


[#19] 六次化農村の今後の取り扱いについて

ゲームマーケットでの発売から1か月半ほどの時間が経ちまして、今後の取り扱いについて、以下の通りとさせていただくことになりました。

・ボードゲーム専門店を中心に一般出荷
・残り部数(少しです)を引き続き弊社通販にて販売
・再生産の予定は今の所無し

先日よりお話していた通り、「六次化農村は生産部数500部」「即座に完売するようなことが有れば再生産検討」
ということでしたが、通販での販売の結果完売には至っておりませんでしたので、
(以前よりご要望をいただいていたこともあり)残り部数について卸での出荷をさせていただくことに致しました。

いただいたご注文により、弊社での在庫は(弊社通販分として残している数部を除き)完売となっておりますので、
ご購入を予定されていた方は各ボードゲーム店舗様でお買い求めいただければ幸いです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて六次化農村につきましては、(少部数とは言え)ニューゲームズオーダーの枠内で製品化でき、
愛好者の皆様を中心にお試しいただけ、様々ご感想を持っていただける所まで届かせられたこと、たいへん良かったなと感じております。
なおかつ弊社としては実質完売でき、このちょっと厄介な、さりとて見過ごしてしまうには惜しいゲームを収益化できたというのは、
その規模はともあれ小さなことではありません。


製品化する上では、東京ドイツゲーム賞に応募いただいたものをそのまま発売、とはできなかったのですが、
仕上げる上では「どう整えるのか」もしくは「どう整えないのか」といったことを、自分達なりに考え、
取り組ませていただきました。
それは、作者である神田さんのデザインのご意図と、これを遊んでいただく皆さんの「緊張感のある橋渡し」と言える作業でした。
両者の距離を近づける、ということは、果たして今回すべきことなのか、という気持ちも当然あるわけですが、
ジレンマを感じつつも、商業的に成立させる意味というのは、やっぱりある(何せ皆様の卓上にお届けできますから)、
というのが自分の立場です。
皆様のご理解とご協力をいただき、自分たちとしては、一つ頷けるものになったかなと感じております。

自分の「六次化農村」に対する個人的な感想は「ボードゲーム作ろうとする人って、不思議な人たちだよなあ」
ということです。
どういうモチベーションであんな大変なゲームをお作りになるのか、自分には根本的にわかりえないんだと思っています。

例えばワレスが好きなら、大多数の人はワレスのゲームを遊んで満足するし、スプロッターが好きならスプロッターのゲームを遊んで満足。
自分で作るっていうのは、「それで飽き足らない」からなんでしょうか。それ以上のものが何かしら見えるということなのか。

そういった方々に、奇異さを感じながら、同時に尊敬と感謝の念を抱いています。
商業のことだけ考えるといつの間にか忘れそうになりますけど、ボードゲームの面白さを動かす両輪、その一つは、
作者の方々のその「奇妙な習性」だと思うのです。

そういったことを踏まえて…いや踏まえなくてもいいんですが(笑)、六次化農村、良かったら遊んでみていただければ幸いです。

 

 

 


[#20] 8月始まってる。

忘れた頃にブログ更新(笑)。7月は(私は本社仕事でしたが)ワンフェス出展したり、自社ゲームの制作進めたり、
タチキタ的には相変わらずガンガン来る他社さんの製造仕事進めたり…ということで忙殺されている1か月でした。

出荷も順調。ニューゲームズオーダーの期は3月からですが、3,4,5,6,7月と、5か月連続で合格点の売り上げを出せてます。
凄い!とどこか他人事感覚で思ってますが(笑)。
昨年までに着々準備してきて、昨年末にそれがようやく整いました。
「2017年はこうなる(はず)」としていた予測が、その通りに進んでいる感じ。
「まあ、予測した通りだから…」という気持ちと、「おお、ホントに予測通りになってる、凄いなあ」という気持ちが両方あるってことで。

今月は、秋ゲームマーケットに新製品を出すための締め切り的な月になっており、ここの所の働き次第で出来に反映されるので、大事。

再版関連については、お陰様で先月ファブフィブが再入荷できました。
品切れしているハツデンについては、おそらく8月末に間に合うようなスケジュールで進んでおります。
手に入り難い向きもあるかと思いますがもうすぐですので、少々お待ちいただければ幸いです。

 

 

 


[#21] 夏だから唐突に本音。

さて8月も10日。毎日暑いですねえ(今日はちょっとましでしたが)。

現状2つのボードゲーム制作に着手、で1個サブ的な物が増えて3個、となっているのですが、
お陰様で営業的に尻に火が付いている状態まではないので、ある程度腰を据えてやれております。
(次回ゲームマーケットには基本出したい、とか、契約の期限が、とかはあるのですが)

自分達の今の役割を考えると、このやり方かなと思うのですね。
バリバリ出せばいいってもんじゃない形勢になっていると思うので。
絶対必要、絶対欲しいってものを作れるように、力を満たしてまいりたいものです。


2017年のニューゲームズオーダーの役割、っていうものについては納得ずくで果たしているし良い感じでもあるのですが、
2017年の私個人、ということでいうと、「ニューゲームズオーダーの責任者」のみに注力していることに若干懸念があったりもします。
諸状況に対して言いたいことはあるし、言った方が良いかなあということもある(ネットでは書かないものの口頭では常に公言していますが)。

一つにはまあ、ボードゲームの出来の良し悪しについて。
昨今のSNSの広がりに追随して、好みかどうか、という話にひたすら終始させてしまうのは、流石にまずい気がしてるんですな。
そもそもこのジャンルのゲームってのは、何が良かったんだ、というのを、失わないようにはしたいもので。
ただまあ、自分が思うこのジャンルの長所って、絶対万人向けじゃあ無いんだろうと思うので、
売れる限り売っていきたい商業上の都合との相性が悪いから、隠されがちになるんでしょう。


そしてまあ、もう一つはプレイヤー、もしくはプレイヤー集団の良し悪しということについて。
ボードゲームは箱とプレイヤー集団の掛け算なので、箱の出来良くするだけでは所詮蟷螂の斧で。

確かに駄目な箱はある。いくらでもある。思わずクソゲーと呼びたくなる。
でも、それでも誰かがそれなりには力を割いて作ったゲームを気軽にクソゲーと呼ぶ割には、
プレイヤー側にはクソプレイヤーという汚名を受けるリスクが無いってのはどうなのか。

いやホントはきっとその汚名のリスクは陰にはあるんですが、流石に度が過ぎて波風立つ感じなのと、
自分もその汚名を受けるリスクがあるから皆でちょっと意識するのを避けてる、という2つで皆明言しない。
そう言われてしまうと、皆誰かしら、自分のコミュニティ内の知り合いを思い浮かべてしまったりするし。
常にじゃなくても時々…みたいな人もいるし。
(勿論「クソプレイヤー」の物差しって、という難しさでもあるんですが、まあまずは周囲の関係者の範囲で「あの人とずっと遊んでいきたい」と思われているかそうでもないか、という一点でいいのではないかと思います)


とまあ唐突に書きましたが、特に心境の変化があるようなことがあったからでもなく(笑)、
「そう言えばこういうこと、随分長いこと書いてないなあ」と思ったからです。

正直最近、良いゲームを良い感じで遊んでいただいているグループも、めっちゃ増えてるな!と感じてます。
有難いニューカマーの皆さんがホントに多い。ホントに嬉しい。

ただその状態って意外と自然でもない。ボードゲームって、適当に作って適当に遊んでも面白くなるわけじゃあない。
作る人たちがうんうん頑張って生み出したゲームを、遊ぶ人たちがうんうん頑張って楽しむから、面白くなるんだろうなと思うんで。
ボードゲームが1回面白い度に、快挙だと。
その度に、デザイナーとプレイヤー全員が、ハイタッチして喝采を上げてもいいようなもんだなあと、
そう思っているので、そういうことがガンガン起こって、そうじゃないことが減ってく方向になればいいなあ、と。

いつも思っている願いを、ふと書きました(笑)。まあそういうことの橋渡し、引き続き頑張ってまいりまーす。

 

 

 


[#22] 9月の進捗。

気が付けば9月も半ば。B2FGamesとしては9月決算なので、今月を終えれば11年目も終わりです。
ニューゲームズオーダーの売り上げは今月も堅調なので、出版している自社ゲームを選んで、そして遊んでいただけてるなら、
自分が言葉を連ねるより申し上げたいことも伝わってるんじゃないかな…というブログ更新を怠っている言い訳です(笑)。
しかし人数規模も変わらずなので、粛々とした通常業務でも日々はしっかり過ぎていくもので。

先日はついにコヨーテの増刷、1回で1万部を刷ることになりました。
コヨーテに限っても、ここの所は半年5000部、年1万部くらいは売れるという話になっています。
確かにモリモリ出荷してるがホントかいなと思ってる所も相変わらずあります(笑)。
ただまあ選んでいただいているんだし、安定供給できて、収益も上がってってことなら
(コヨーテ面白いですから)万々歳ですからやりましょうねえ、と。

加えてここの所税務調査が来て、会社運営のよりしっかりとした体制作りはやらにゃならんねという話にもなっています。
見えにくい所ですが、ここらへんをクリアしてより一層滑らかに皆さんのお役に立てれば良いなと思いつつ(言うは易しですが)。
新製品制作/出荷業務/体制整備、ということで当面進むことになりそうです。

もうすぐゲームマーケットのサークルカット締切ですね!
一応2個載せられるつもりで進めていますのでー、もう少ししたらお話します。
いや〜、上手くブツを完成させられればいいが、…どうだろう!

 

 

 


[#23] B2F12年目、スタート。

10月開始、ということは〜、2006年10月に創業したB2FGamesの11年が完了し、12年目に入ったということを意味します。
そうか〜。

…という本日も、私はボードゲームの制作関連で、重い仕事をやっております(笑)。
相変わらず、ゲーム作りは難しい。難しいけれど、不可能とは違う。
「難しい」を雑に「不可能」と読み換えて、「不可能」フォルダに投げ込めば、大概のものは不可能不可能。
価値あるものは、価値あるものほど、大概難しいんですから。

難しいけど、できたら素晴らしいことをやりたい。今は目の前にあるゲームのことだけ。
これを皆さんに届けられたら、わたしゃやってる価値があるワイ、と改めて確信できますわ(笑)。
面白いゲームを皆さんに遊んでもらいたい。面白いからなあ!そんだけじゃあ!

ということで、、、12年目もよろしくお願い致します。

 

 

 


[#24] 10月、終わるじゃないか。

10月開始のブログを書いたと思ったら、今日はもう27日(笑)。
この1か月、ゲーム制作&ゲーム制作の日々でございました。
次回新発売のものは相応の規模のプロジェクトなので、なかなか一朝一夕にいかず、1oずつの進行という感じで来たのですが、
…かなりいい所まで来ている、気がしています。しっかり完成できるのか、という点では毎度ながらスリリングですが、
できたらきっとお楽しみいただけるんじゃないか…、とは思っております。
後で2017年を振り返ると、このゲームという感じになりそう(笑)。自分のパートはもうすぐ100%終わり、
製造パートに移っていきますが、もうひと踏ん張り、後悔の無いように全力を振っていきたいものです。


世間はエッセン・フェアですね!例年ながらドイツには行っておりませんが…、ドイツに行ってできる仕事も確かにあるのですが、
行かなくてもできる仕事もあるのです。ドイツに行かなきゃできない部分はいらしている皆様にお任せし、
私共は私共独自のことに専心してます(意外と色々あるんですなこれが(笑))。

エッセンがらみでも一部ご期待いただいているものについては、手掛ける予定にはなっております。
時期については向こうサイドのスケジュールによるためちょっと時間は要するかもしれませんが、
自分達としては可及的速やかにと考えております。

今年は安定的に販売ができるようになった分、出版タイトルは減らして…と言っている割に、
相変わらず出版待ちのタイトルにデータ待ちのタイトルに、契約書だけ持ってるものに…という状況は変わらず、
あまり体感が変わってないです(笑)。NGOは2月決算なので、2月いっぱいまでにはもう何個かお届けしたいと思います。
引き続き、よろしくお願い致しまーす。

 

 

 


[#25] 「ババンク」「パトロネージュ」の前置き。

さて!久しぶりに本腰入れてブログを書く時間が到来したようです。
昨日、ゲームマーケット2017秋に向け発売を予定しているボードゲーム2種、「ババンク」「パトロネージュ」について、
ニューゲームズオーダーのTwitterにて発表させていただきました。

いや〜。ババンクは製造完了にまで漕ぎ着けているんですが、パトロネージュについては未だ全く予断を許さない製造スケジュールのため、
「ちょっとまだ発表待ってー!」と叫びたい状況です。パトロネージュ、本当に出るのかな(笑)。
…ということなんですが、2017秋のパンフレットのカットには2つの画像を載せていましたので、
ここは覚悟を決めて、発表することにしました。

2つのゲーム、特にご説明することの多いパトロネージュに関しては近日中にこちらのブログで詳しく書いていきたいと思いますが、
その前に、現在の私達、ニューゲームズオーダーの立ち位置について確認していこうと思います。

当ブログや、私吉田の口頭では折に触れ繰り返し説明して参りましたが、2012年〜2016年の5年間は、
ニューゲームズオーダーにとっての1つの期間と位置付けてきました。それは言わばニューゲームズオーダーが、

「国内コミュニティの内外にメリットをもたらす継続可能なボードゲームパブリッシャーとして存在を始められるかどうか」

を問う5年間でした。これは明確な意図をもって2012年の春ゲームマーケット(ファブフィブを発売した回ですね)に開始し、
その時点で5年間で完了させるという目標を設定していました。目標と言う以上に願望でもあったわけですが(笑)。
なかなかの紆余曲折を経たとは言え、結果としてはちょうど5年間で一つの形にできたという自己評価を、今はしています。
実現性ということを考え出す前の段階で、「念ずる」というのは大切だったんだなあと、改めて感じています。


さて、それでは何故、私達は前述のような目標を設定したのか。
それは何より、「私達が存在してほしい主体が存在しなかったから、自分たち自身で担当するより他無かった」ためです。
これは私以上に、22年前に私をカタンに誘った沢田が常々述べることですが。
「ボードゲーム、こういう風に持ってった方が絶対良いと思うんだけど…そう転がらないんだなあ(不思議)」という気持ちは、
学生の頃から今もって変わらない所ではあります。
正確には今も昔も、部分的には、他の心ある皆さんにやっていただけて有難ーい、という事柄も多々ありますが、
じゃあもう自分達全然動かなくてもいいかな、と思えるかというとそういうことは全くなく、
引き続き「やらにゃなあ」という事柄が山積している状況です。

誤解されがちですが、私は「ボードゲームをより多くの人が遊ぶ程に望ましい」と無条件に考えているわけではありません。
2017年の国内ボードゲーム状況を見るに、日本におけるユーロボードゲームに商業の風を吹き込んだ主犯格の1人と自分が見なされるだろう、
という認識は大いにありますが、それは「ボードゲームは存外良いビジネスになるのだぜー、はっはっは」という気持ちから行ったことでは、
まあ全くありませんでした。

私が仕事として始める前の段階では、商業的な顕在需要ということで言えばボードゲームに関してはほとんど無い、求められてない、
といって良い状況だったわけですが、ボードゲームが持つ価値について少し早く知った人間の一人である私は、
「潜在需要ということにまで目をやると、圧倒的な供給不足なのではないか…?」と感じずにはいられなかったのです。
顕在化していない需要に対して供給を先に始めて需要の顕在化を喚起する、というやり方で2006年にB2Fゲームズを始めましたから、
当時はなかなかのうつけ者扱いをされたものなんですが、10年間でその誤解は何とか解けたかなあ、という格好です。

自分は、世の中の一角に、身の丈ちょうどな形で、幸せな形でボードゲームが(も)存在したら良いんじゃないかなあ、と思ったので。
ボードゲームを以前から愛好し続けてきた方や、新たに興味を持った方が、よりすんなりとボードゲームの楽しさを共有できる状況を作りたい、
と言う方に重点を置いてきました。
その状況を作ることが、「今はボードゲームを知らないけれど、今後ボードゲームに出会って幸せを得うる人たち」に気づいてもらう余裕を生み出すだろうと。
必要以上の拡大を性急に志向する必要は本来なくて、気長にそこにあったら良いな、と。

しかしながら、私たち(や国内のボードゲームに関わってこられた皆さん)が現在のような取り組みを始める前には、
ボードゲームは、そこに踏みとどまることすらも至難な状況でした。
今となっては当たり前に手に入るようなボードゲーム環境(つまり遊びが継続可能な環境)も実現されていたとは言い難く、
吹けば飛んで散り散りになるような状態。これは問題だと、自分は真剣に捉えていました。
とりわけ私達が力を注いだことと言えば絶版名作の復刻、安定供給という所が分かり易いかと思います。
面白いゲームが入手できる状況が保たれる、というのは、ジャンルの継続にとっては一番手早い前提条件だと考えたのです。
ですから、特に2012年からはここに本腰を入れ、リスクは感じながらも絶版復刻のプロジェクトを連打し、
商業として継続可能な地点までの収益化を目指してきました。

2016年の終わりには約50タイトルのリリースを実現し、自分の中で「一旦ここまで」という区切りを付け、
2017年に入ってからはアクセルベタ踏みを止めました。少なくとも、ここを一つのセーブポイントと設定しようと。
ニューゲームズオーダーが、「無茶しなくても続く会社」となれたのかどうか、確認するフェイズに入りました。

2017年も暮れに近づき、ここ半年余り自社の推移を観測していて、「うん、成立した」という結論を、この数か月で出しました。
継続的に供給しているタイトルが堅調に売れていっているということは、増加傾向にある、
「今度の休みにでも、ボードゲームを遊んでみようかな」という皆様のお役に立ち続けていることと捉えられるからです。


以上のことは非常に喜ばしいことですが、それは同時に、私達の今後に新たな課題を突き付けてもいます。
「じゃあ何故これ以上、新規タイトルをリリースする必要があるのか?」ということです。
過去5年間はあった「ボードゲーム商業成立、継続のため」という大義名分は、今は後退したのです。
私達は、自ら創り上げたボードゲームを世に問いたい作者本人ではなく、ボードゲームの価値を、
ご希望の皆様にお引渡しして収益を上げる企業ですので、
「もう十分に、遊びきれない程のボードゲームが押し入れにも売り場にもあるんだけど…」という状況では、
さらなるゲームを出す意義は、大きく薄れかねないのです。


とは言え、心の一方には。
「いやー、どうしても、どうしても!出したいゲームがもう一つあるんですわー」という気持ちがあります。
「まだあの傑作を出してないじゃないか、ニューゲームズオーダーは!」という思いや。
東京ドイツゲーム賞を通じて、「こんなすごいゲームを作る人がまだいるんだー!」という発見は。
一つ一つのゲームのことを思い出すと、わくわくする心が呼び覚まされるのです。
このゲーム出したら、きっと皆、喜ぶぞー!と…。

だから。やっぱりまた新たに、ゲームを出そうと思うのです。ただ前述の通りですから。
今までも適当にゲームを出してきたことは一切無いわけですが(そもそも適当だと出せないのですが)、
今まで以上に、高いハードルを越えた上で、ゲームを出していこう。という思いの中で、今年はゲームを作ってきました。


…嬉しいのはね。
新たにゲームを作ろうとすると、相変わらず、めっちゃキツイです(笑)。
西山と二人、最近口をついて出るのは「こんだけバカ程やってきたのに、ゲーム作りって何でこんなしんどいんだろ…」
というフレーズです。
ババンクも。パトロネージュも。めっちゃキツかった…、というかパトロネージュは現在進行形でキツイ(笑)。本気ヤバイ。

何せ私ども結構合理主義者なので、その私達がここまでキツイということは、それだけたいそう価値のあるものを皆様に
お届けしようとしてるってことなんじゃないかな…、という、手がかりになってる所がございます。
わかんないんだけどね。みんな、楽しんでくれるかなあ。楽しんでくれたらいいなあ。
売れたらいいなあ。ええ。


ということで、次回ゲームマーケットまで1か月を切ったただ今から、おいおいとお話していこうと思います。
おそらくは、ある程度発売に自信のあるババンクから。
パトロネージュは間に合うかどうか予断を許さなすぎるので、状況が好転するたびに適宜お話してくような気がしてます。
待っててくださーいね(笑)。

 

 

 


[#26] ババンク日本語版の話、その1



先日Twitterにて第一報を出させていただいた通り、レオ・コロヴィーニとブルーノ・フェデュッティの共作によるカジノゲーム、
「ババンク」の日本語版を発売します。価格は税抜4500円(税込4860円)となります。
箱サイズは弊社の「ラー」「さまよえるオランダ人」と同じものになります。
アートワークについては、「ファブフィブ」以降弊社の復刻作を数多く手掛けていただいたタンサンさんにご担当いただきました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて!「ババンク」ようやくのリリースとなります。初版は2001年、ウィニング・ムーブズ社から販売されていましたね。



毎度悩むのですが、お読みの方は、「お〜ババンク、良いねえ懐かしいね」と言う方と「ババンク?知らない」
と言う方に分かれることと存じます。
少数派としては「最近ボードゲーム始めたけど、詳しい人に誘われて遊んだ!」という方や、
「ネットで調べてたらふと見つけて、興味惹かれたけどどこにも売ってないのでそのままになってた」と言う方も、
いらっしゃるかもしれませんけれども。

知らない方向けには本来ゲーム内容自体のご説明がご要りようだとは思うのですが、
程なくウェブサイトにPDFルールもアップ致しますし、ゲームマーケットで新たにお配りする弊社のカタログにも掲載しますので、
具体的な内容についてはここでは一旦他に譲ることにします。
(タイトルも特徴的ですし、入手難となって以降も根強い人気を誇るゲームですので、検索すれば情報は得られることと思います)
この出版についてのポイントを整理してお届けしたいと思います。
デザイナーズ・ノートならぬパブリッシャーズ・ノートといったようなことを、今回は書こうかと。


さて、このババンクの復刻、まず何といっても…難産でしたねえ。
絶版名作の復刻を数多く手がけて参りました結果、「ニーズが高く復刻し易く効果が高い」タイトル、
まあつまり可能な所から着手してきた分、「バザリ」「キャント・ストップ」あたりからは、
着手してから複数年単位の時間が経過するものが出てきており、ババンクもそういった内の一つです。
遡りますと、権利所在を探し当てて(共作というところが難しかった一因です)、色よい回答を得たのが2014年の終わりごろでした。
3年かかってしまった計算になります(笑)。
当時は枯山水の初版を発売する直前ですから、このゲームの出版自体が難しいというだけでなく、
私自身の余裕と、それ以上にニューゲームズオーダーの資金繰りに全く余裕が生じなかった、
ということも時間がかかった大きな理由です。

私共の手元では、ゲーム出版は、「電撃的に契約から出版に至るもの」と「非常に長い時間を要するもの」に分かれる傾向があります。
スピード感のある出版の実現は、様々な点から、それ自体に価値があります。
「時流に乗る」と言いましょうか。「このゲームを今お届けすれば、きっと皆喜ぶはず」という、確信を感じる瞬間があります。
その時には、何よりも「すぐにお届けする」というのが第一の目標になります。
当然ながらしっかりとした製品にするという一線は守らなければならないですし、
急ぎながら合格点を出すというのはそれ自体骨の折れる仕事ではありますが、
「何故このゲームをリリースするのか」という部分での悩みが生じません。
文化的に意義があって、きっと皆が歓迎する、収益が上がるプロジェクトならば、これは良いことずくめです。

一方、その価値について尋ねれば「名作」であると誰もが認めるにもかかわらず、
そういった流れには乗りにくいゲームというのもまた、数多く存在します。
こういったゲームについては、「どうすれば商業的に形にできるのか」という、力を加えるための構想を必要とします。
文化的な価値と商業的な価値を共存させるうえで、「何かしらの+αが無ければ、動きが取れない」ということなのです。
これは単純な気分の問題ではなくて、「持ち駒が足りない」と言いますか、気合一発着手してみても、制作が途中で推進力を失ってしまいます。
私達が多くのゲームを同時に取り扱う中では必然的にプライオリティが下がり、労力や予算の配分が後回しになってしまうのです。

2015年には権利の取得に進み(これ自体には大きな意義があると思いますので、「やった!」という手ごたえはありました)、
しかしながら様々な主力製品の取り扱いに追われ、具体的な着手には一定の時間を要しました。
2016年にはうちうちにはタンサンさんに打診をし、2017年の初頭に具体的な制作に着手しました。
しかし前述の通りの状況のため、タンサンさんも私達も思うままに制作を進めることはできませんでした。
残念ながらやはり、推進力が不足していたのです。

ただそんな中でも「2017年中には出版しなければならない」、という風に動けたのは、
何のことは無く権利者サイドとの契約にある出版時限が2017年いっぱいと迫っていたためです(笑)。
本格的に締切、という部分と、2016年を切り抜けてある程度の安定を得たニューゲームズオーダーの環境が功を奏し、
いよいよ本腰据えて考えねばならないぞ、と机の真ん中にババンクを持ってくることができました。


一旦色々飛ばすのですが、タンサンさんとお話し合いしている中で、突破口になるのはコンポーネントだろうという結論に達しました。
内容物の中でも、ババンクの中核にある「チップ」について考えてみようか、という話となったのです。


…という所で長いので、本題にまだ入ってないですが続きは次回にします。
うーん、パトロネージュの話がたくさんあってたいへんだと思っていたのですが、ババンクも掘り起こしてしまうと大概ですね(笑)。
今回のような前提を受けて、ババンクをこんな感じにしましたよ、という話を次回はしたいと思いますー。

 

 

 


[#27] ババンク日本語版の話、その2



数日の間が空いてしまいましたが、ババンクのお話の続きと行きましょう。
復刻するのが難しい部類に入るババンクの日本語版を、それではどうやって形にしていくのか?というお話です。
今までやっていなかったもしれませんが、ローカライズの時に私たちが何を考えているのか、
ということについて、ちょっと率直な所をお話してしまおうかと思います。

前提として、あるゲームを復刻する時に、その難度について私がどういった所を気にするかという話と、
その基準の中でババンクがどう位置づけられるかということをまずご説明しましょう。

●元ゲームの知名度、人気
●元アートワークとの距離感。変更するか否か
●内容物の「作り易さ」
●内容物の「魅力、工夫しがい、伸びしろ」
●元版製品の出来栄え
●過去の国内供給量の多寡
●ゲーム内容と価格設定のバランス
●契約の可否と条件
●現状ボードゲームを遊ぶ、あるいは近く遊び始める方々にどう受け入れられるか

項目にするとこんなことが挙げられます。ババンクはというと、ざっくりと以下の通りです。

●知名度、人気…知る人ぞ知る名作、という位置づけ。長年絶版だったため、知っている人の割合は、このタイトルの元版出版時の人気に比べ随分低いように感じる。良し悪し。
●アートワーク…なんと「フェレータ」のカサソラ・メルクルが描いていたもの。経験上、まず間違いなく元のアートは入手不可能。
●作り易さ…プラスチック製チップ60個、木製ポーン6個+紙コンポーネント。シンプルなようでチップ60個は大量。非常に厳しい。
●魅力…値打ちを感じさせる内容物はほぼチップで占められている。これの取り扱い次第。
●元版の出来栄え…アートワーク、内容物とも評価は比較的高い。元版のコンポーネントで不満を耳にしたことはほとんど無い。
●過去の供給量…知る限り他言語版は目にしたことは無く、供給量も少ない。中古価格は高い(ぱっと見た限り100ユーロ近辺)。好材料。
●内容と価格…実はがっちりとコストがかさむチップ60個に対し、ゲーム時間は1時間かからないためそう高く出来ない。難点。
●契約条件…ユーロボードゲームの普通の範囲。ニュートラル。
●どう受け入れられるか…勝負所。満場一致で大歓迎ということはないが、凄く喜んでくれるタイプのプレイヤーも十分想定できる。


大体こんな感じです。
ここから総合的に判断していくと、

●間違いなく底力のあるゲームで、リリースできればある程度勝負できる
●元版の出来は評価されていたため、元版に劣る物を作ってしまうリスクがある
●コストパフォーマンス、元版原稿の保存/確保の観点から、元版を忠実再現することはできない/すべきでない

ということになります。
大きくわけて「アートワーク」と「コンポーネント(専らチップ)」が問題になったのです。
加えて「内容物のコストと販売価格のバランスを取るのがかなり難しい」という観測があります。

少し詳しく説明しますと、これは確認したわけでは無いですが、カサソラ・メルクルは、
元より几帳面に過去の仕事のデータを管理している人ではない、ということを、
過去の『エレメンツ』『フェレータ』『ジュリエットと怪物』のローカライズの経験で知っております。
ババンクは2001年作で、カサソラ本人のゲームでも無いですから、残ってなくても何らおかしなことはない。
そしてもう1つ、チップです。元版のチップというコンポーネントは、こんな感じの物です。



言いようによっては銭湯とかで見かけそうなプラスチック製の楕円形の札なのですが、
これが手触りや質感も良く、結構使いやすいもので印象深かったのです。
私達自身も、ババンク再版に着手する上では「あのチップを再現する必要があるってことなのかなあ」とぼんやり考えていました。

しかしながら、改めて進めてみると、この「再現路線」はなかなか筋が悪いな、と思えてきました。
推測するに、元版のチップも「このゲームの製造にあたって開発した物」というよりは、
「製造現場周りで入手できるものとしてたまたまあって、『ちょうどいいじゃん』と採用したもの」だったんだと思うのです。
実際ゲームを作っていると、こういったことは現場で頻繁に起こるので、おそらくそうなんじゃないかと。

しかし、当時結構な定評があったチップなんですが、改めて良く見ると「そのものズバリ」という代物ではないなあと思い始めてしまいました。
(自分を含めた)オールドファンは「そう、これこれ」と思うとしても、それは元のババンクを知ってたり、
もっと言えば持ってたりする人の感覚に限られるのでは…、と。
これだけ多くのボードゲームが出版されてきた上での、2017年現在の大半のボードゲーマーの皆さんには
「ああ、そうなんですか」位の感想しか抱かせないんじゃないかなと。
その割にはプラスチック製ですからコストもかかりますし、極力元版に寄せていったところで
「似せたんだろうけど元の方が良いね」と言われてしまう可能性も高い。
ここまで考えて「こりゃいかんなあ」と悩みに入りました。コスト高なのに大して受けないのでは散々です。
実際は、コストを掛けてリスクを取るのだとしても、このチップを「別のもの」、さらに言えば「もっと良いもの」にしなければならない。
好みは人それぞれあるにしても「元版とは違うけど、これはこれでアリだね」という最低線は保たねばならないのだなと。

この上で自分が突破口と考えたのは2点でした。

●元のチップより「カジノらしく」する
●元のチップより「便利」にする

元のチップは定評がありましたが、これは例えばより「カジノチップ」的なものでも良いのではないかな、という発想がありました。
もう一つあったのは、「プラスチック製ではなく、木製にするという手はどうだろう」という発想です。
リアルなカジノチップか、具合の良い木製駒か…というところで思案しつつ、並行してアートワークを(カサソラに比肩するアートワークを)
依頼することにしたタンサンさんにご相談し話し合っていた所、朝戸さんから

「円柱の高さとチップの価値を比例させてみるのはどうですか?」という提案がありました。…それだ。

ババンクのチップ60枚は、

「5」チップ 24枚
「10」チップ 18枚
「20」チップ 12枚
「50」チップ 6枚

という構成だったのですが、これを

5o厚チップ 24枚
10o厚チップ 18枚
20o厚チップ 12枚
50o厚チップ 6枚

とする手。これを「カジノチップを積んでいるような円柱」に見立てる!
50mm厚って要は高さ5pの円柱ですから、「50o高」と言った方が正確な物ですが。

これのメリットは「テーブルに乗っているチップの総額が高さで一目瞭然」となることです。
元のチップと比べても、絶対的に便利。その上、十分満足感のあるコンポーネントになる。
カジノ感も出るし、最高だ!…と思ったのですが、一点大きなハードルが生じたことに、すぐ気づきました。

「でもそれ、多分めっちゃかさばるよねえ…」という問題です。

ゲームの内容とプレイ時間、加えて初版販売時に流通していた価格とのバランスから、
自分は今回のババンクについて、「上限5000円」もっと言えば「税抜4500円(税込4860円」、
つまり弊社で販売している『ラー』『さまよえるオランダ人』の価格と並べるという課題を設定していました。
『ラー』の価格に並べるということで、同時に『ラー』と同サイズの箱にする、ということを想定していたのです。

カジノチップ気分を味わうためには、円柱があんまり細くて良い訳はない(そもそも倒れやすくなってしまう)ということを考えると、
直径は20o…いや25oくらいは欲しい、のか?
直径25oで5o厚〜50o厚の木製駒?計60個?をジップ袋に入れて、それをラーの箱に入れる?他の紙コンポーネントと一緒に?

…それ、収まるか?


と、とりあえず目の前に無い60の円柱について考えてもそうそう答えが出るわけもなく。
暗澹たる気持ちになりかけたのですが、そこでふと思い至ったのです。
製造方の西山が最近導入していじり始めていた、「3Dプリンタ」が使えるんじゃないかと。

…ということで早速西山に状況を説明すると有難いことに「多分ダミー作れるよ、出力に数日もらえれば」という話。
おお!未来っぽい(笑)!

という所で、タンサンさんとのイメージ共有も含め、3Dプリンタの実用性テストも含め、ダミーの作成に着手することになりました。
西山が導入し始めた時は「ミニチュア造形関連の実験か〜」と眺めていたんですが、意外と地味な所で繋がってくるもんなのですねー。
文明文明。

ということで、次回はその結果できたチップのご紹介を(ようやく)しようと思っております。
多分次回、ババンクの話は締められまーすー!

 

 

 


[#28] ババンク日本語版の話、その3(最終回です)。



さてババンクのお話の続きを。前回ご説明したように、色々な条件を考え合わせた上で
「直径25mm、高さ"金額"mm」の円柱型チップ、計60枚(60個)を採用したいなあ、という所まで行きました。
「満足感のある」サイズであるということ、「利便性のあるサイズ」であるということ、
そして想定している「箱に収まるサイズ」であるということ、…という条件を全部満たすのは、これじゃないかだろうかと。

ボードゲームを作る時に大切なのは、一見すると両立することが難しい、対立する諸条件が現れた時に、
「簡単に優先順位を付けてしまわない」ことだと思っています。

A. 箱サイズはもう決まってるんだからチップは小さくする
B. チップは大きくしたいんだから箱サイズを大きくする

みたいな、AかBか?というボタンを簡単に、もっと言えば安易に押してしまっては、良いモノは作れません。
「なんか上手いこと、ほうぼう良いとこ取りできないもんかな〜」という諦めの悪い検討が、
イコールで魅力的な商品開発の活動ということになるのかなと思っております。

その上では、「3Dプリンタでダミーを作って確かめる」というのは、地味なようで非常に有効的でした。
両取りするために、より具体的にぎりぎりの所まで突き詰められるからです。
「できなさそう」と「できない」は分けていきたい。
「できなさそう」のフォルダの中に、「実はできる」が入っていることがあるので。

ちょっと以前から各メディアで「3Dプリンタの導入で産業の新時代到来!」みたいなことを目にしていて、
「は〜科学や医療の現場で色々と活用されるってことなんですかな〜(自分には関係なさそう)」という他人事な印象を持っていたんですが、
ふと使えることになったら実はとても便利でした。コロンブスの卵。
実物と同じ体積・形状のダミーを作って確かめられるという利便性を実感しました。

ちなみに西山が使っている3Dプリンタがこちら。



「3Dプリンタ買おうと思ってるんだよね」と西山に言われた時、「でもお高いんでしょう」と返したら、
「自分が買おうと思ってるのは8万円くらいだから安いもんだよ」と言われて結構びっくりした記憶があります。
へえ、意外とリーズナブルなのねえ!という感想と共に、「その価格の機種でお役に立つの?」と質問した所、
「用途次第だから、自分らの使い道だとそんな高いの要らないんですよ」と言われ、なるほどなあと。蛇の道は蛇。

で、ざざっと作ってもらったのがこちらです(実際手早くできてました)。



白い理由は特になんてことはなく西山が備えていたマテリアルを使ったからです。ちなみに中はハニカム構造、要は空洞です。
サイズ感が文字通り具体的に把握できて地味に感動しました(笑)。
と共に、ああやっぱりこのサイズ感は良い気がするな、と確認できました。
となると次は、全部でどれだけになるかということですが…。



こうなります。予想通り、最近の大箱のボードゲームでもほとんどみないガッツリ感。
これを見せたら、沢田に「ほとんど駒売ってる感じだね」と笑いながら言われました。
ババンクは2001年のゲームな訳ですが、このコンポーネントはどちらかと言えば1990年代前半の大箱の趣きです。
自分としては、こういった最近のドイツの大箱でも見ないような木製駒というのは、1つ楽しいんじゃないかな、と思いました。
ということで、試しにラーの箱に収めてみると、タイルやカード及び中敷きを工夫すれば何とか入るのではないかな…、という感じでした。

箱に収める方法については、海外製造の場合は、想定する収め方のラフをを工場に図で送り、最終的にはあちらで設計してもらいます。
加えてチップは4色が要りようなので、タンサンさんに色指定をしてもらった上タンポ印刷(木製駒に直接印刷するハンコ的な手法)
のデータを用意し、木製駒のサンプル製造を工場に依頼。

ここから(料理番組みたいですが)サンプル完成に2か月かかりまして、出来上がったのがこれです。



5を黄緑、10を橙、20を銀、50を金にしているのは、美観もあるのですが、
プレイヤーカラーの6色とかぶらせないというのが一番の理由です。
数値は黒の方が見易いのでは、ということでこちらも試作しましたが、
「元々横から見て金額を判断でき、数値記載は補助」ということなので、
タンサンさんとの協議の結果、見栄えを重視し白印字を採用しました。



全部で60個、こんな感じです。やっぱり大量!



プレイヤーの位置を表すポーンの形状、大きさは元版を踏襲してます。
復刻の時は、そこら中の寸法や仕様を適当にいじくり回してしまうと基準が無くなってしまうので、
「機能していた元版のサイズ」という所に立ち返ります。



箱にも無事収まりました(笑)。一苦労でしたが良かった。



チップやポーンをタイルの上に置くとこんな感じです。
ご覧の通り、金額と高さが合うので50ごとに積んでいくと額面が一目瞭然です。
タイルも元サイズを踏襲しています。
箱に収めるのが難しく、タイルについては若干の縮小を検討していたのですが、
やはりリスキーであると感じたため元版準拠を強行。打ち抜きタイルを止めて収めてくれた工場に大感謝です。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とまあ、こんな感じです。ニューゲームズオーダーのウェブサイトに、ルールのPDFをアップ致しましたので、
よろしければご覧ください。

http://www.newgamesorder.jp/games/vabanque

自分としては、ババンクを(できるだけ気分よく)手に入れられる状態を回復する上で、
自分のできることはやれたかな。と認識しております。
この前このババンクで遊んでいる風景を初めて見ましたが、ひいき目を抜きにしても、良いんではないかな、と思えました。いや〜。

ババンク、誰もが知っているゲームでは無いかもしれません。
ただ大事なゲームだと思うし、遊んでいただけたら、「おお、こんなのあったのね!」と喜んでもらえるゲームだと思います。
だからこの度、もう一回頑張って箱作って、お届けします。1個1個そうしてきていますが、どうしても楽はできないようです(笑)。
元版の方が好きだなあって人はいるかもしれませんが、そういった方は元版をお持ちのことも多いと思いますし、
中古で手に入れたりも不可能ではないかと思います。
自分達としては「これはこれでアリだね」というババンクになるように、できる限りやりました!
この機会にババンクを皆さんで遊んで、楽しんでいただけたら嬉しいです。ほんとに!


…ということで、ゲーム内容のお話なんかは熱心なプレイヤーの皆さんや、ご自分でルールを読んでいただく皆様にお譲りして、
次回以降はパトロネージュのお話をしたいと思います。
あと20日を切ってきて発売について全く予断を許さぬ状況なんですが、何とか進めております(笑)。
オリジナル新作なので色々ご興味ある方いらっしゃると思うので、ご紹介して参りたいと思います。

 

 

 


[#29] 仕事に直接関係のないデジタルゲームのお話、失態ついでにお届けします。

ゲームマーケットまで1週間、本日はお休みいただいていたんですけれども、
先刻少々ニューゲームズオーダーのTwitterアカウントで粗相をしてしまい、たいへん失礼致しました。
…と言ってあまり多くの方がご存じないかと思うのでご説明しますと、
今般任天堂からリリースされているどうぶつの森のスマホ版を試しにプレイしていた所、
誤ってニューゲームズオーダーの公式アカウントでどうぶつの森の宣伝ツイートを流してしまったという…。
いや、非常にあせりました。二度とこういったことの無いよう気を付けます。

お詫びのついでになってしまうんですが、本日は普段しないお話を。
ご存知の方はご存知と思いますが、私テレビゲームも遊びます。
元々ぼちぼちと遊んでいたんですが、ゲーム作りの仕事をするようになってからは、
一層意識的に一般向け人気作を遊ぶようになりました。
ポケモン、モンハン、スプラトゥーン、そしてこのどうぶつの森など、ここ数年で一通りやるようになりました。
(ホントはマインクラフトもやらねばならんのでしょうが未着手です)
スマホのゲームについても、少し遅くはあったのですがポケモンGoのリリースをきっかけでやるようにしました。
第一には勿論余暇の遊びなのですが、仕事面からも気になる部分があるのは確かです。

ボードゲームはじめアナログゲームが取りあげられる時「アナログゲームはデジタルゲームと一味違う魅力がある」
という言葉が息を吐くにように繰り返されるのですが(うっかり自分で言っちゃったりもするのですが)、
ある時「それって本当にそうなのか」という一からの疑問を持たねばならないのではないかと、思い始めたのです。
具体的にはPSP版のモンハンが空前の大ブームを起こした時ですが。
あれ…4人で対面での同時プレイで、めちゃくちゃ盛り上がってるみたいですけども…。
というのが気づきの始まりでした。危機感、ということではないのですが、アラームが鳴ったような気持ちにはなりました。
認識は随時改めなければいけないよなあと。

時期としてはボードゲームの認知度が国内で徐々に高まっていた頃でしたが、一方自分の目には、
2010年頃から、一般向けデジタルゲームのギアが変わったように映りました。
収益性と言ったところでは過去の最も良かった時代に比べ苦労してるように聞こえていたわけですが、
提供されている遊びの内容で見ると、いや凄いものは凄い、突き抜け始めているなあと。
少し前まではインターネット通信搭載、と言っても、料金もお高いしサービスを受けるのも面倒だし、
うーん気にはなるけどちょっと見合わせます、という感じだったのが、DSやPSPといった携帯機の機能が上がって普及したことで、
いちはやくPCでオンラインゲームに対応していたような熱心なマニアじゃなくても「オンラインプレイ」が標準的になって。

それでも「対面ならでは!」というアナログゲームの魅力は依然あると思っていたし、それは今も思っているのですが、
ゲームの内容や環境によっては同席してないほうが気楽で良いですよね…ということも多々感じるようになり。
高性能な携帯機があれば別に出先でも、同じ空間でも遊べてしまうようになり。
冷静に見るとこれは、アナログゲームの専売特許ってことになっていた遊びが、本格的に持って行かれてるのでは…、
と思いながら一つ一つやってきたもので。
(一方、モンハン等で形成された、新たに対面で遊ぶようになったゲームグループが、
 その後アナログゲームにも目を向けてくれた、という恩恵も多々あると感じています)


「どうぶつの森」については、3DS版で初めて試してみました。
正直自分が個人的にめちゃくちゃ魅力を引かれるタイプのゲーム(…という言葉がなんか居心地悪い作品ですね)
では無かったのですが、「これこそ唯一無二!」という方がそれこそ莫大にいるものなので、
「守備範囲外、知らん知らん」という風に適当に通り過ぎて良い気はせず、「うーむ、うーむ」とうなりつつ、結構やりました。
これが多くの人の心を掴んで離さない理由…は、逆説的に私共のゲームが一定以上広がらない理由とイコールで結べるのかもしれないな、
というのが感想でした。
私は、私たちの好むタイプのボードゲームがスーパーメジャーな存在になって欲しいと思っているわけではなく、
世の中の一端に適切に存在すれば良いと思うので、その感想に、マイナスの感情はほとんどありません。
自分としては、このゲームと、このゲームが得ている幅広い支持ということについて、
考える機会があったのはただただ意味がありました。
親しい間柄で、そんなしきりに優劣競わなくてもいいですよねえ、それは、と。
他のプレイヤーからは勿論、作り手側からも、明確には何かしらを課されない。
作り手が用意した仕掛けに呼応して、自らが気のすむまで自分に課せばいいと。あるいは課さなくていいと。
自分の遊びの領域に、他者の事情で物差しが当てられないという価値、と言いましょうか。

ですから、一番好きなゲームがこれという人に、どんなボードゲームをお勧めするか?という問いは盲目的だろうと。
果たしてボードゲームをお勧めすることが適切なのかどうか?と、考えるべきだろうなあ、と思うに至ったのです。
どうぶつの森もボードゲームも、遊びですからねえ。「お好みでしたらどうぞ」というものなので。


さてそれで、今般スマホ版がリリースということで、長きにわたって「スマホゲームは出さないです」という方針を一貫していた任天堂がそれを変更して
「どうぶつの森」を投入してしまうという…。
話を聞いただけで「そんなん反則じゃあ!」という程成功が約束されているのではないかと思いました。
一プレイヤーの気持ちとしては、私向けではないに違いないので遊ぶ必要は特段無かったのですが、
どういう仕上げのものが出てくる(そしてどの程度成功する)のだろう、という意味で言うと非常に楽しみで、
今日やってみたのです。…想像しますにこれは、やっぱり既存作以上の成功が約束されているんだと思います。
(想像しているだけなのでやっぱり何もわかってないっちゃあわかってないんですが)
門外漢が初日にかじった程度なので、特に具体的なことは書かないのですが。まあ、勝ち確感が凄いとおもいました(笑)。

ただ、今回のどうぶつの森が一番人気のゲームの世界なら、私たちのゲームも、こちらはこちらで存在意義は何ら欠けずにあるかな、
という気持ちになりました。私たちは私たちで、一角に居ましょうやっぱり、と。
スプラトゥーンの時の方がよっぽど「ひいいいい」と言う悲鳴を上げましたね(笑)。
どうぶつの森と私共のゲームは、多分投げかける先の方々の求めるもの、遊びに際してのお気持ちが、
あまり似ていないのではないかと思うからです。

ところで今般の私の失態ですが、半ば「まさかな…」というところで起こしてしまったミスでございまして、
(まあ基本私こういったことに結構疎いのですが…)
私普段会社のメールとゲームのためだけの(電話も使わない)スマホを携帯しているのですが、
Twitterに関しても会社のPCでのみ書き込んでいるので、スマホにはTwitterアプリも入っていません。
仮にスマホでTwitterを使うとなるとログインをしなければならないわけですが、
どうぶつの森で「Twitterで広める」…というような所を触ったらあっさりと(そしてうっかりと)ツイートが出てしまったという…。
確かにログインしているメールのアカウントとTwitterのアカウントは連携してるのですが…。
(実際の所「アカウントの連携」というのがどういった範囲にわたっているのかが半ば理解できていないんですが…私だけでしょうか)
「Twitterログインしてないのに?ほんとに?」と思って、試してみて、ブラウザで確認してみたら、ホントにツイート出てる!ぐわっ!

いやあ、これはたいへんな仕組みだなと…。
…というところで、当世の情報拡散の手法について痛みと共に学んだところで、本日はこのへんにしたいと思います。
自分たちはこういったテクノロジーとは基本関係のない所でゲームを作っていくのだと思うので、
その分自分たちが投げかけたい範囲には何ができるのか考えていけるように。

何とか「ババンク」がリリース可能な状況が整いまして、「パトロネージュ」もそちらに向かっております。
パトロネージュは…、幾多のデジタルゲームと並び立てるものになってるんじゃないかと、私としては自負しております。
できる限り、ぎりぎりまではやりましたので、後はどうなるか。
残り10日ほどとなりましたので、随時情報をお出しできますように、引き続き取り組んでまいります。

 

 

 


[#30] パトロネージュのお話、その1。

 


ババンクと共にゲームマーケットで新発売する予定の第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品、
「パトロネージュ」につきまして、今週に入りようやく、弊社倉庫にて先行販売分の準備が整いました。
制作に様々な課題がありご心配おかけしたのですが、何とか!当日販売できることとなりました。
いや〜、かつて無い程の難産でしたので、仕事が終わったわけでは全く無いながら、肩の荷が一つ降りた気分です。

と言っても、ババンクと異なりパトロネージュは全くの新作ゲームとなりますので、ご存じ無い方もたくさんいらっしゃることと思います。
順を追って説明してまいりたいと思います。


■第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品

2012〜13年に第1回を開催した、テンデイズゲームズさんとニューゲームズオーダーが共同開催している公募のゲームデザインコンテスト、
「東京ドイツゲーム賞」は、2016年に第2回を開催しました。
第1回についても「枯山水」「曼荼羅」と言ったゲームの出版に繋がり、私達自身嬉しい驚きをたくさん味わったのですが、
第2回については、ともすればそれを上回る衝撃がありました。
第1回の約60作の応募に対し、第2回は約40作となりましたが、応募数の減少に相反して優れた作品が非常に多く、
審査では嬉しい悲鳴が度々上がりました。
審査に当たっては、一次は書類審査、二次では応募者の皆様にお作りいただいたプロトタイプを用いての実プレイ、
これを踏まえ特に良い物を最終の三次審査にかけ、再度のテストプレイと話し合いで大賞および各賞を選出しています。

そんな中、二次審査終了の時点で、力作ぞろいの作品群の中、なお頭一つ抜きんでた評価を得たのが「パトロネージュ」でした。
平易かつ理性的なルールで1時間級、考えさせつつも楽しく熱く盛り上がる。
ルネサンス期の、歴史に名を残す芸術家や作品、メディチ家のパトロンたちをテーマに取った、王道といって良いゲームながら、
今まで見たことのあるユーロボードゲームとは言わば「哲学の違い」を感じさせるゲームデザインに、
うーんこれは凄い、と私たちは喝采の声を上げました。

現在ニューゲームズオーダーのウェブサイトにルールブックをアップロードしています。
よろしければご覧ください↓
http://www.newgamesorder.jp/games/patronage

…と言って、こちらのルールブックは本作のゲームデザインの半分でしか無いのですが。
未だ皆様にお見せしていない「もう半分」にこそ、自分達の知らないゲームデザインの力が宿っています。
それは、最終的に175枚を数えたカード・セットの内容です。



■作者、山田大夏さん

二次審査で初めて遊んだ「パトロネージュ」の出来栄えは、私にとって完全な驚き…というわけでは実はありませんでした。
それは(間接的にではありますが)作者の方の経歴を存じ上げていたからです。
「パトロネージュ」の作者山田大夏(ひろなつ)さんのご本業は「TCG(トレーディングカードゲーム)のデザイナー」です。
そう言われてみると私たちは、数多く出版されてきた国産TCGのルールを誰が作っているか、多くの場合知らないわけですが、
山田さんは国産TCGの黎明期から、20年にわたりゲームデザインで生計を立てていらしている、
つまり専業のゲームデザイナーの方、ということでした。
(B2FGamesを作る前はイエローサブマリンのTCG店舗にもいたことのある自分としては、
 「『アクエリアンエイジ』の中核デザイナーのお一人」という話を聞いた時には「えっ」と声が出ました)

西山が依然在籍していた玩具企画会社に山田さんもいらっしゃったため、西山から話を聞いておりまして、
その山田さんが「TCGとは違う、ヨーロッパスタイルのボードゲームを一度しっかりと作ってみたい」ということで、
第2回東京ドイツゲーム賞に応募していらしたということです。

「…バリバリのプロじゃないですかー!」という感想は思わず出たのですが、実の所東京ドイツゲーム賞はプロアマ不問なので。
面白いゲームをご応募いただける可能性の高い方なら大歓迎でしたので、応募をお受けした所、それがこの「パトロネージュ」でした。
間違いなく非常に高いレベルにある作品だったわけですが、沢田と私は
「このどこを切っても『熟練』というレベルの出来のゲームに大賞を贈るのは、
 (新人賞的な趣がいくらかある)東京ドイツゲーム賞としては果たしてアリなのか」
という、賞の意義を問い直すような話を、二次審査の段階で早々に始めていました。
この一点を取っても、第二回東京ドイツゲーム賞の審査は終始このゲームを中心に進んでいたのです。


■ニューゲームズオーダー特別賞

「本命、パトロネージュ」という印象が頭から離れることはありませんでしたが、二次審査では他にも数多くの多種多彩な有力作が現れました。
結果、当初予定した5作品から大幅に上回る8作を通過作とした上、私たちは最終審査に臨みました。
最終的に大賞を獲得したのは赤瀬よぐさんの「グラバー」であり、
「パトロネージュ」はニューゲームズオーダー特別賞ということになりました。
この点はYoutubeにアップロードしている最終審査の話合いで侃々諤々と話しておりますが、理由は2つで、
「最終審査でのパトロネージュのテストプレイにおける(全審査を通じて1回だけの)パフォーマンスの低下」、
そして「『グラバー』のゲームデザインの『若々しさ』を審査員が高く評価したこと」でした。
私としては、もう一つの弊社特別賞受賞作「探偵稼業」を含めこの3作は、「間違いなく自分の『責務』になる」と捉えました。
皆様のテーブルに良い形でお届けできるよう、預からせていただきましょうと。
しかし加えて「ハツデン」もあり、「六次化農村」もあり…と、
東京ドイツゲーム賞の優秀作だけで2017年の予算と日程は全埋まりと言ってよい状態になりました。
一つでも多くの作品の出版を実現すべく「ハツデン」「六次化農村」から着手し、春にはリリースをしたわけですが、
では次はどの作品の制作を…、と考えた末、「パトロネージュ」を始めよう、という決断に至りました。
直接的な理由は、最終審査時に私がこのゲームの行く末について持っていた推測と、その推測に対する回答を、
ゲームマーケット17春の現場で作者ご自身からいただけたことにありました。

最終審査の話合いで大賞が「グラバー」に決まりかけた時、私は
「パトロネージュの作者の方は、この最終審査で1度限り起きたパフォーマンスの低下を、
 あるいは完璧に『直せる』方なのではないかと想像している」
という向きのことを言ったのです。

ゲーム作りを1度でも志した方ならおわかりのことと思いますが、ゲームをほぼ完成させて、その最終形で生じた欠点と言うのは、
言うほど簡単に取り去れるものではありません。1つ直そうとすると新たに2つ3つのおかしな部分が生まれて、
その内原型を留めなくなってしまいます。
手直しを重ねるうち、「そのゲームが当初現出させようとしていたもの」が、損なわれていってしまうこともしばしばです。
しかしそれは、この方に限っては当てはまらないのではないかと。
この方は、「私たちの本業」に等しい力で、ゲームのルールと長年向き合って、生きてこられたわけなので。
それは生半可なことでも、尋常なことでもないと、私は思うのです。

上記のことは、無論山田さんの経歴からの想像だけで言ったのではありませんでした。
パトロネージュの底に潜む、尋常ではないゲーム作りへのこだわりが、審査を通じて伝わってきていたのです。
ルールをご覧いただいた方ならある程度ご想像頂けると思いますが、このゲームは最終的に運要素も小さくない、楽しくネアカなファミリーゲームです。
「なんだ運ゲーか」なんていうファーストインプレッションも、もしかしたら言われるのかもしれません。

ここで自分が申し上げたいことは、
「こういったタイプのゲームを作る為に、ここまで緻密にこだわってルール・カードのメカニクスを追求する人を見たことが無い」
ということです。
パトロネージュのメインカードには、TCGのようなテキストは無く、アイコンだけでシンプルに表現されているのです。
ほぼ言語依存の無いゲームです。ただ山田さんは、その全体と細部の両輪に、ひたすらにこだわられる。
その飽くなきこだわりが、ゲームプレイの快適さや展開の盛り上がりにダイレクトな効果を上げています。
口にしてしまえば単純です。それとなく遊んでいればまず気づかないような領域で、出来上がりが全く違うのです。
これは是非とも遊んでいただいて、ご判断いただきたい部分です。

二次審査において関係者全員が「パトロネージュ」を称賛した中、最も高く評価し敬意を表したのは、自分だったと思います。
だからこそ、最終審査においてより厳しく見るためのテストプレイをしたのです。
提出されたパトロネージュの僅かな、しかし確かな欠陥を見つけたのは、自分です。
そしてそれを一番残念に感じたのも、おそらく自分です。

だから、最終審査において、それまでの方向性を曲げてでもと、ニューゲームズオーダー特別賞を
「探偵稼業」「パトロネージュ」の二作に贈ることとさせていただいたのです。
審査以降、「パトロネージュ」と縁が無くなるようなことがあれば、「パトロネージュ」が理想的な形で出版されて、
多くの人を楽しませることに、自分が関われないこととなる。このゲームの凄さを最も明確に認識している自分こそ、
同時にそれを皆さんにお届けする適任者であると考えましたので…それはよくない。
この作品とボードゲームを愛する皆様を繋ぐには、私に担当させていただくより他は無いと、私は確信していました。

上記のように考えていましたので、ゲームマーケットで審査後初めて山田さんにお会いするや否や、挨拶もそこそこに、私は山田さんに尋ねました。
「あれは、直せますか」と。これは、私の中で強い願いを込めた問いでした。

回答はきわめてシンプルでした。

「直せます」

山田さんは、平然とした顔で即答されました。

「4つの方法があります」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

というところで、1回切りたいと思います(笑)。
実際のゲーム作りの話に全く入っておりませんが、本作についてご判断いただけた部分があるかと思います。
続きはできれば今日もう1回書きますが、間に合わなければゲームマーケット後に書きたいと思います。
ともあれ「パトロネージュ」、心からお勧めします。
よろしくお願い致します。

 

 

 


[#31] パトロネージュのお話、その2



さて!先日のゲームマーケットにて無事発売させていただきました「パトロネージュ」のお話、続きを書いてまいりたいと思います。

ゲームマーケット2017春の現場で、山田さんから直接「直せます」というご回答をいただけました。
これを受けて私は「このゲームに着手せねばならないな」と決意するに至りました。
せねばならないな、というのは…、前提として、このゲームの出版が難しいということは明らかでした。

http://www.b2fgames.com/article.php?s...9211055248

先日のババンクのお話のその2辺りで、私がゲームを出版する際の判断方法について、ご紹介したことがあったかと思います。
個々の項目、細部は異なりますが、これはオリジナルゲームの出版でも同様の方法で考えます。
そこに当てはめてみると、パトロネージュというゲームが「一筋縄では商業的な勝算が見出せない」ゲームである、
という観測が出るまでには、そう時間を要しませんでした。

何と言ってもネックとなるのは「『ルネサンス』というテーマ」と「カードの枚数・種類の多さ」
そして「このゲームがもたらす面白さ、楽しさの質」の掛け合わせによる難しさでした。
この掛け合わせこそが(実の所)このゲームを傑作たらしめていると私たちは感じたわけですが、
それは、間違いなく「見過ごされ易い」タイプの作品性でした。

まず「ルネサンス」というテーマについてですが、これはボードゲームとしてスタンダードである一方、
「このテーマだったら絶対買う」という支持層が広がっている類のものではありません。
どちらかというと「ありふれている」という印象を与えてしまいかねない。
一方で、しっかりとした考証が求められ「適当に取り扱うと怪我をする」テーマであることも事実です。
つまり、有体に言えば「損の多い」テーマ設定です。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
これは枯山水にも一定は言えたことなわけですが、
枯山水については作者ご本人のテーマへの飽くなき掘り下げからゲームデザインが出発しており、
またその結果できあがったゲームの作品性はプレイヤーに好奇心を喚起させるもので、
その点で自分はあまり仕事をする必要がありませんでした。
(テーマが同時に、作品に大きな力を与える武器となっていたわけです)
だから枯山水においては私たちは「作者の理想に近づける」という仕事さえすれば良かったのです。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

商業ベースではここで「テーマの総入れ替え」といった大手術が敢行されることも、
ありえはするわけですが…、それはまた大きなリスクを伴う仕事であり、また東京ドイツゲーム賞入賞作品の出版における、
自分達が考えるマナーとも異なります。
また作者の山田大夏さん、そしてそのゲーム作りをサポートする皆さんとしても、
水準以上にしっかりとルネサンスというテーマに向き合われていて、東京ドイツゲーム賞に応募されてきた自作サンプルについても、
(そのまま製品のコンバートし難い部分もありはしたものの)整えてこられていました。

自分の中で、「さて、どうする?」という自問した結果、まず「ママダさんにお願いするのは、決まりだな…」
というのはすぐ固まってきました。…ほぼ毎回そうじゃないか、というお話はあるわけですが、
今回に関しては、是非も無くママダさんのお力が必要でした。

パトロネージュのカードは、「芸術作品のカード」と「芸術家のカード」を中心とし、150枚を超える分量を必要としました。
枚数が多いカードというと真っ先に「ドミニオン」が思い浮かびますが、ドミニオンが同種のカードを多数収録しているのに対し、
パトロネージュは一枚限りのカードは多くあり、計100種類以上の絵柄を必要とします。これがシンプルに途方も無い。
この絵柄を担当するにあたっては、「クオリティ」と「統一性」と「画風の幅」、そして「ゲーム内容への理解」を同時に伴わせ、
「作業が早く、止まらず、安定していて」、そして「変更に柔軟」なイラストレーターでなければならない…。

…書いていて改めて滅茶苦茶な話だと思います(笑)。
自分の知る限り該当する方は、ママダユースケさんしかいませんでした…、というより、
ママダさんという選択肢が無ければパトロネージュの出版は到底叶わなかったわけです。
単にイラストの腕というだけでなく、ボードゲーム自体への造詣、そして美術大学のご出身ということから来る美術への造詣という面で言っても、
ママダさんしかいないし、ママダさんならあるいは…、という、すがるような気持ちで依頼させていただきました。

加えて、自分はもう一人の方のことを思い出していました。それが、今回美術監修をご担当頂いた山中麻未さんです。
山中さんは(お知り合いということではなかったのですが)ママダさんと同じ大学のご出身で、まだ在学されていた数年前、
数回に渡ってB2Fの店舗に来店されたことがありました。
その度に数時間にわたって、私吉田、そして西山とボードゲームの話をしたのです。

山中さんは大学で芸術文化学科に在籍されていて、「一般社会への美術の普及」といったことを研究されていました。
それに伴い「卒業制作において美術を普及させる狙いを持ったボードゲームを制作したい」と考えておられました。
こういう出来心めいた話自体は、ゲーム屋をやっていると日常的に耳にしてしまうので、
私も西山も「簡単じゃないですよ。止めておかれた方が良い」という現実的かつ紋切り型な助言をしました。しかし、存外に山中さんは本気のようでした。
本気なのならこちらも本気で話さざるを得ない、…ということで、自分も(商売等々とまったく関係なく)山中さんの思いをとことん聞き、
思いつく限りの助言をし、言うべきところはとことん苦言を呈しました。
最近ボードゲームを知ったばかりの方が、大学での学問を修めたという証明に値するプレイアブルなゲームを作り、
それがまた美術の普及にも何らかの意味を持つ…、というハードルの高さに「無茶だな…」という感想を得ると同時に、
まだボードゲームが現在程には国内普及が好転していなかった段階で、ふとボードゲームの魅力に触れ、
自分の学問と本気で関連付けようという若い方がいる、という事実には、大きな嬉しさを感じたことを覚えています。

話すべきことは話した後、山中さんが店舗に姿を見せることは無くなりました。
後はあの方次第だな、と思い、自分達は仕事に戻っていきました。
会社の浮沈を賭けたボードゲーム制作に追われる日々でしたから、それ以上思い出すこともありませんでした。
そしてしばらく時が経った後、Twitter経由で以下のゲームのことを知りました。

http://asamiy024.tumblr.com/post/110263428782/

「ヴォルプスヴェーデ村と4人の芸術家たち:1894 - 1937」。
美術大学の卒業制作でボードゲームを制作した人がいたらしい、と言って、ボードゲーマーたちの間で「未知のゲーム」として噂になっていました。

自分は良い意味で、小さな驚きを感じました。「やったのか」。「作ってのけて、それで卒業したのか」と。
山中さんと話していた時、正直やり遂げるのは難しいのではないかな…、と感じていました。
別に山中さんが特別何か問題があったということではなく、それ以前に、意味のあるボードゲームを作るのは難しいからです。
それを大学の教授たちに評価されるものとして見せるというのは、難しかろうと。
そのゲームが面白いかどうかとか、それは自分にとってあまり興味の無いことでした。
それが美術の普及に役立つかどうかも、正直私たちにはそんなに重要ではない。
自分達にとっては、ゲームはあくまで楽しむもの、面白いものなので。

ただ、真剣に美術とボードゲームを結び付けた人がいたんだな。
その時自分は山中さんのことを思い出し、しっかりと憶えました。
そしてその後彼女がゲームに関わる仕事に就かれたこと、ボードゲームに携わる活動をされていることを噂に聞いて、思ったのです。

美術に関わるゲームとか、将来あるかもしれないしね、と。
第一回東京ドイツゲーム賞、さらには枯山水初版制作の修羅場の只中にありながら、
何時間も、ふと店頭に来たお客さんの話を真剣に聞いて、答えたんだから。
未来に何かしら、新たなゲーム作りの可能性になっても良いだろう…、と。


…そこから2年ほど経ち、…この、パトロネージュというわけです。
このゲームの製品化を実現する上で、「山中さん」という人材のことは、真っ先に自分の頭に上っていました。
山田さんのご意向を聞き、ママダさんに依頼を打診し、そして山中さんにご連絡を差し上げました。

ママダさんも、山中さんも、美術に関わる方であり、同時にボードゲームを愛好していらっしゃる方です。
お二人ともに、まず必要なことは一つだと考えました。
お二人に立川でのミーティングをお願いし、依頼の内容もそこそこに…、
応募時に山田さんからお送りいただいたサンプルで、パトロネージュを3人で遊びました。
お二人は「これは、面白い」と仰いました。…そうでしょうとも。そこは全く、心配していなかった(笑)。

ママダさんと山中さん、お二人のお力をいただいて、私は、このパトロネージュと言うゲームの美術的側面の魅力を高めようと考えました。
ボードゲームを愛好する、私たちにとって最高の芸術家であるママダさんの腕と。
美術を一般に普及させたいという(私達自身は持ってはいない)山中さんの知識と動機に、お力をお借りしようと。

…当然コストは高まる一方だったわけですが(笑)。自分は間違いなく必要だと考えた次第です。
リリースし終えてなお、非常に重要な決断だったと、確信しています。
このパトロネージュというゲームが、そこそこに出て、適当に通り過ぎてしまうゲームでは無く、
意味のあるゲームとして、忘れがたいものとして残る、ボードゲームとして生じるため。
その可能性のため。美しいゲームデザインに、美しい実体を伴わせたいと。

「これで、このゲームに『力』を与えることができるかもしれない」と、ようやく私は考え始めました。

 

 

 


[#32] パトロネージュのお話、その3



さて少々日が空きましたが、パトロネージュのお話の続きです。

パトロネージュの大きな部分を占める150枚超のカードについて、山田さんから提出されていたサンプルを元に、
ママダさんと山中さんと、カードのデザインを始めました。このゲームに登場する芸術作品には
「建築」「彫刻」「絵画」の3種があり…、それぞれ「資料を用いるのか(用いれるのか)」、「ママダさんが描くのか」という問題がありました。
また芸術家についても、しっかりとした肖像画が残っているものから素描のみのもの、彫刻だけが現存するもの…等々、様々でした。
サンプルでは全般的に写真画像が貼られていましたが、これをそのまま製品にすることは難しい為、
山中さんを中心にバランスを模索することとなりました。結果としては絵画については元画像、
建築・彫刻については現存するものの写真を元にママダさんが調整・彩色、芸術家については現存資料を参考にママダさんが執筆、となりました。
一方もう一つの重要事項となる箱絵については、様々検討の結果「時祷書」「写本」の形式を踏襲することにしました。
これは私の「ゲーム内容を表す光景を、美術的観点とバランスを取りながら表紙に収めていただきたい」という要請に応じていただいたものです。
…と、制作を終えた所で書くのは簡単ですが、ママダさんを中心に、相当なお骨折りをいただいた作業でした。
山田さんともゲーム上の機能性との両立について密にお話合いさせていただきました。

ニューゲームズオーダーでのゲーム作りでは、これは私自身の元々の性分も大きな動機となっているのですが、構成する各要素について、
硬軟取り合わせて多くの意味を同時に入れ込みます。その優先順位や精度へのシリアスさ…といったことについては言ってしまえば
「最後は感覚」ということになるのですが、ともあれ「あちらを立ててこちらも立てる」といった信条で、倒れても倒れても立て直し立て直して、
最終的には「方々立ってる!凄い!」という状態を獲得することを狙って、作業を進めていきます。
「めっちゃ都合のいい状態」への執着と根気が不可欠な仕事になります。

ただそんな私共でも、今回ほど多くの要素を同時に、両立を目指して束ね合わせ、製品に入れ込んだことは、今までありません。
「このゲームをこういう物にしたい」と真剣に考える、確かな能力を持った主体が多ければ多い程、
それはゲームが持つ魅力が増す可能性となりますが、当然ながら、その個々のこだわりの協調を取るのは飛躍的に難しくなります。
ただこのゲームは「素晴らしいけれども商業と適合させることが難しい」作品でしたので、リスクを取ってでも、
大きな力を引き込む必要がありました。「何でこんな無茶するの…」と傍からは見えるのかもしれないのですが、
後に引けないくらい張り込んでおいて「大当たりが残っていないとわかっているくじを引く」というのは、誰の為にもならないと考えたのです。


上記のような制作の方針が最も顕在化しているのが、既にご存知の方も多いと思いますが「金属製コイン」と「木皿」でした。
今日はそのお話をしたいと思います。

山田さんと製品仕様について初めてお話した際は、「ママダさんと山中さんをアートワークに起用する」ことのご了解をいただくことが
第一議題だったわけですが、実際はそれ以上の課題がカードに並ぶもう一つの中核的内容物である「予算を表すマーカーと受け皿」の取り扱いでした。

自分の中では「大量のカードのイラストと印刷で相当のコストがかかる」ことはこの時点での前提となっていましたので、
このゲームの製品としての価格、コストのバランス取りの為、自分の中で定まった方法として、山田さんに尋ねました。
「受け皿は無しにして、『紙製チップの表裏で未使用、使用済みを表示する』といった方法の採用についてはどのような感想を抱かれますか」と。

山田さんのお答えは、ある程度は予想していたものの、その予想以上にはっきりとした「それは止めていただきたい」というお答えでした。
東京ドイツゲーム賞に提出されていたサンプルでは、市販のマーカーにマドレーヌのカップ、といった簡易なものが入っており、
勿論遊べるものではありましたが、そこにどういった意図が置かれているか、というのが強く伝わってくるものでは無い状況でした。
そこで、私がその理由を尋ねますと、その答えは「このゲームの着想に関わるものだから」ということでした。

TCGにおける(マジック・ザ・ギャザリングでいう所の)「タップ」「アンタップ」という手続き、表示方法については、
テーブルゲームに日常的に親しんでいる方ならばご存知のことも多いことと思います。
縦置きにしたカードの効果を「起動」する際に「タップし」(90度回転させて横向きにし)、使用したことを示す。
多くのTCGでは、自分の手番が回ってきた際にこれらを全て「アンタップし」(横向きになっていたものを縦向きに戻し)、
再び全てのカードが未使用の状態となったことを示します。

この手順についての改善を考え、その一つの答えがこの「マーカーと受け皿」です、というのが、山田さんのご説明でした。

TCGではゲームが展開するにつれ場にあるカードが増える傾向にあるため、自分の手番開始時に「アンタップ」を行う際、
それなりの数のカードを全て「縦向きにする」手数、手間が生じる。ここに分け入りたい。
ラウンド自分がコストを費やした時、「容器にマーカーを投入する」。そして次のラウンドの開始時に全員が「容器をひっくり返す」。

「1回の動作で『アンタップ』を完了できるようにしたいんです」

というのが、山田さんのデザインの意図でした。
このゲームはカードに関わる手続きから出来上がっていったゲームでは無く、この「マーカーと受け皿」にこそ、発想の出発点があると。

…なるほど、と自分は考えこみました。
まずこのアイデアの方向性について自分がどう感じたかと言うと、それは素直な「共感」です。それは確かに良いこと、という。
それはこの「マーカーと受け皿」がもたらす「改良」が、地味ながら確かなものだったからです。
この世界に「手番の度にアンタップをたくさんすること」を楽しみとしているプレイヤーがほとんどいないだろうことは想像に難くないですから、
この改良が、(実現さえされれば)確実なメリットをもたらすことは明らかでした。

ゲームの内容や、アートワークや、その他様々な部分については、それはプレイヤー皆様個々のお好みがあります。
一方でこれは物理的な「改良」で、遊ぶ人ほぼ全員にメリットをもたらし得る。
こういったこと一つ一つの積み上げは、ゲームの楽しみに確かな力を与えていきます。
(先のババンクでの「1o1金」も、これと同様の考え方です)
このゲームのリズミカルなテンポと、この「マーカーと受け皿」は確かなリンクを持っていると言えました。
ルールの量、ゲームの各場面で提示される選択肢の広がり、そして手続きと用具の調和の度合い、といったことは、
ゲームのリズムに影響を及ぼし、そのゲームを名作にも駄作にもしますから、…やはり、この方のデザインには確かなものがある、
という認識を、このお話を通じてさらに強いものにしました。

しかし、費用対効果という角度から見ると、「マーカーと受け皿」を製品に入れ込むのは、率直に言って難題でした。
これを及第点というレベルまでコストを切り詰めて、と考えると、紙製、もしくは木製の円形マーカーと、
紙製の容器(できるだけ小さくできれば平面。ちりとりのような形や組み立て型)となります。
「未使用」と「使用済み」の領域分けができ、容器を持ち上げてのワンアクションでリセットが出来れば、一応その機能は満たされることになります。
しかしこれは、どう考えても「喜ばれ難い」。そしてその割に「それなりのコストはかかる」。そして「事務的すぎる」。

「コストを削ってリーズナブルに出版し、より多くの人にゲームの魅力を伝えることを目指す」という方向性も、
「夢のあるアイテム、そしてそれに伴うゲーム体験を現出させて、遊んだ人たちにとっての唯一無二の宝物にする」という方向性も、
どちらも良いのです。ただしそれが「十全に実現されるのであれば」です。
ゲーム毎に、その二つの方向性の間で、良い所にバランスを取るのが大切だと、いつも考えています。
真剣に考えるべきなのは、「それでは、このゲームはどこに位置付けるのが良いのか」「それ以上に、どこならば位置付けられるのか」。
創意工夫を凝らしてゲームを作る人が居て、貴重な時間やお金を費やしてゲームを遊ぶ人たちがいる。
そして勿論、その橋渡しを継続することを生業とする私たち自身も。
「作って良かった」「買って、遊んで良かった」「売って良かった」その全ての「良かった」を、どのように実現するかと考えますと、
どんなゲームも、選べる幅は決して広くはありません。
というより、実現可能な細い道を見いだすことだけでも難しく、加えてその道はなかなかに険しいのです。

作者である山田さんの思いをお受けして、「マーカーと受け皿」が不可欠であることは、理解し、また共感しました。
同時に、「そこにさらなる力を引き込まない限りは、勝負できる製品としては、このゲームは実像を結ばない」という確信が、すぐに生じました。

「マーカーを受け皿に入れる」のは、このゲームにとって「お金の支払い」を意味している。
そのお金は、パトロンであるメディチ家が、工房の責任者である自分(プレイヤー)にくだされたもので、
支払う先の最もたる所は、歴史に名を連ねる天才的な芸術家たちとなります。この獲得合戦が、このゲームの一つのハイライトです。

話し合いの中で「実現可能な形」を模索するうち、…自分の中に「金貨と木皿」のビジョンが生じました。
同時に…「ミケランジェロ君、我が工房に来てくれ!」と言うフレーズと、きらきらとした金貨が木皿の中で立てる金属音を想像しました。

このゲームに参加する全員に、まずこの金貨7枚と木皿が配られる。「パトロネージュ」を受けるわけです。
自分がゲーム中に取る一挙手一投足にこの金貨の支払いが伴うことで、その貴重な予算を切り盛りしているということを常に意識してもらいたい。
算数的な確率計算に邁進するばかりでなく、この金貨と木皿から、この作品が描き出す世界に思いを馳せていただき、
ゲームの両輪としたらどうかと考えたのです。
もちろん、他のプレイヤーの手元にある予算の使用状況を一目で把握できる、視認性の良い用具、という用途も、これは同時に兼ねています。

この金貨がアピールする魅力がゲームへの求心力を増し、それがこのゲームの面白さの真価に触れることに、繋がってくれたらと。

ゲームを作る度に、肝に銘じています。
私たちは美しいルールと、そこから生まれるゲームを愛していますが、遊んでいただくほとんどの人にとって、ルールは最後の2%。
その2%に触れていただくため、気付いていただく時間の猶予を作り出すために、98%の力を蓄えなければいけないと。

自分の心中には、「パトロネージュが遊ばれている風景」がありありと想像されました。プレイヤーの皆さんの手元には、金貨と木皿がありました。

この金貨と木皿が備わっているパトロネージュと、備わっていないパトロネージュと、それはどちらがより良いものだろうか?
このゲームを手にする皆さんは、自分の財布の中の二千円余りを、この金貨と木皿の為に、奪ってくれるなと言うだろうか?
それとも、このゲームにより理想に近い姿形を与えてくれるなら、二千円を惜しむことは無いと言うだろうか?

ここは自分の想像でしか無いわけですが。これだけ多くのボードゲームが溢れている中で、
皆さんが本当に欲しいのは「未だ得ていないゲーム」「未だ得ていない楽しみ」だろうと、私は思うのです。
自分の仕事はそのお気持ちにお応えすることだと思って、ゲームを作りたいので…、今回も、そうさせていただくことにしました。


「金属製のコインと、木皿を用意しましょう。たいへんですが、それが必要だと言うことがわかりましたので…」と、
山田さんにお伝えしたことが、その日のミーティングでの一番の成果になりました。


…という所で本日は終わります。思い出すと本当に色々なお話が出てきて、なかなか書き進むのが難しいのですが(笑)。
あと1回だけ書いて、終わりにしたいと考えております。
「パトロネージュ」は1月に一般販売できるよう進めておりますが、12月中には弊社より一定数の通信販売を行えるようにと考えています。
年末年始に遊ぶゲームに選んでいただけましたら幸いです。

 

 

 


[#33] パトロネージュのお話、その4(最終回)。



http://www.newgamesorder.jp/games/patronage

さて、前回は「金貨と木皿」の採用についてのお話をしました。
各方面にとって価値あるものとして打ち出すべく、自分が構想した唯一「行ける」と思ったパトロネージュがこれだったわけです。
自分はこの構想…というより壮大な皮算用をひねり出すのが最大の役割なのですが、
この私の皮算用の領域に大きな幅を与えてくれるのが、実際に製造を取り仕切る西山を始めとしたニューゲームズオーダーの各人の働きと、
安易な方法に頼ることなくここまで引き上げてきた会社の規模、構築してきた販路ということです。

唐突に背中に翼を生やして飛ぶことはできません。人ですから地道に歩いて、ということになります。
2010年に行った「ぼくらの火星」の制作を通して生じた、「ゲームの制作、製造、流通の、質と量両面での向上」というテーマがありました。
3歩進んで2歩下がる、ともすれば3歩下がってしまう日々でしたが、7年で一定の成果を見たことで、
ゲーム作りと販売に際して取れる選択肢の幅がいくらか広がっており、私が今回構想したパトロネージュは、
「自分達の力量をフル活用すればぎりぎり実現できる」と見極めたところにありました。
逆に言うと、製造の選択肢も、予算規模も、ぎりぎりまで使うからこそ相応の力を得るということでもあります。

とりわけ金貨は、自らの手で造形も行う西山の領域です。
自分が金貨と言い出した時点ではその想像は曖昧なものに過ぎなかった為、まず拠り所を作ろう、ということで、
ふたつの方向からの検討を始めました。

ひとつはババンクでも行った、3Dプリンタを用いた形状の検討でした。
直径や厚みはどういったものが使い易いのか。そして「感じが出る」のか。
金属製コインは「重量=コスト」といって差し支えないので、野放図に大きくはできませんが、
金属製にする甲斐の無いものでは駄目ですから、実用性と、満足感と、製造費用のバランスが大切。
加えて「碁石型」も検討対象に入れました。類似している物を考えた時、碁石というのは平面から持ち上げやすく、機能的であるからです。

もうひとつは、「ルネサンス期イタリアで使用されていた実物の参照」でした。
調べてみたところ歴史上のコインのレプリカを販売している海外のショップは散見されたので、
ルネサンス期のフィレンツェの金貨「フィオリーノ金貨」のレプリカを取り寄せて、デザインを検討することにしました。

サイズ検討については20mmと25oを作って各種比べたものの、「20oは少々小さく、25oあれば満足なサイズ」という結論になりました。
厚みについては「4oあると持ち上げ易くコインらしい」「碁石型はやはり使いやすいが製造の安定に際しリスクが高まりそう」。
直径25o、4o厚、というのが一つの答えだったわけですが、これを40枚入れる…と言う話は、計算するまでもなく西山が言いました。
「コスト爆発だわそれ」…そんな気はしていた(笑)。
ちなみに2000セットですから、予定しているコインの製造枚数は8万枚(+不良品対応分)です。

次はこれを、満足感が保たれる範囲で削るフェイズに入りました。
まず直径を1oずつ削った3Dサンプルを作り、「22oまでは削ろう」という結論を出しました。
加えて…「縁を高めにして、中央部を窪ませることで金属の使用量を減らそうか」ということに。贋金づくりみたいですが(笑)。

ここまで進んだあたりで、海外に注文していたフィオリーノ金貨が到着し、確認した所、西山と、
「うーんそうか」「まあそうだよね」と唸ることになりました。

フィオリーノ金貨…実物は(いやレプリカですが)凄く薄いのです。多分1円玉よりも薄い。
「これを忠実に再現したら…使い難いだろうねえ」「あとあんまり夢無いよねこれ…」
実物(のレプリカ)のフィオリーノ金貨と、22ox4o厚のサンプルを見比べて、しばらく思案することになりました。

自分が出した結論は「表裏の意匠はフィオリーノ金貨を踏襲」「サイズは22mmx4o厚で」ということでした。
それにあたり、これは言わば「マンガ肉」だ、という説明を西山にしました。
リアルなフィオリーノ金貨そのものを再現して入れた、と主張して、使い難かったり、期待通りのイメージをもたらさないゲームを作るより、
それなりの脚色があっても、楽しいゲームということを優先する場面だと考えたのです。
そういう判断を下していいのではないかな、と思えるほどには、自分達はこの金貨のことをずっと考えていました。

サイズが決まり、西山がパテを使った造形に入りました。この作業中、西山が始終「何なんだよ、この裏のトボケ顔のおっさんは!」
とレプリカコインを眺めつつため息をつき、それでも造形を再現すべく粘り強く手を進めていました。
後で調べたところ、これは「聖ヨハネ」だそうで(笑)、多少私共の信仰心もこのコインには宿ったかなと思いました。

作った原型を元にシリコン型を作り、低融点のメタルを鍋で煮て流し込んで…、という、
西山恒例のメタルフィギュアの製造工程に入った後、程なく最初の金属サンプルが出来上がりました。
(こう書いてしまうと2行なのですが、ゲームマーケットでのタチキタプリントの外注仕事が多数あり、西山の度々の泊まり込み作業の結果です)

「おお、素晴らしい!」と自分は称賛したのですが、想定していたアカシアの木皿にその数枚を投げ込んでみた時、
思わず「神よ!」と叫びたい気持ちになりました。その後しばらく、西山の苦心の作を、繰り返し木皿に投げ込んでいました。

音が重い…。

表裏とも素晴らしいレベルで意匠が再現され、直径厚みも注文通り、持ち上げやすく、持った時の重みにも満足感がありました。
ただ、自分が想定していた「ちゃりん」という音が鳴らない。何度放り込んでも、「ごとっ」という音がしていました。

ゲームマーケットの日程も刻一刻と近づいてきていましたから、非常に気は重かったのですが…、西山に、そのことを伝えました。
「あと0.5o、薄くしてほしいんだよね…」と。西山は「まじかああああああ」とは言いましたが、すぐに修正にとりかかりました。
ホント頭が下がる思いでしたが、これを直すのが西山の仕事であり、これを直す必要があると伝えるのが私の仕事だということです。

数日後、西山が作り直した3.5o厚のコインは…、(理論的な確信があったわけではない0.5o減の判断にも関わらず)
「ちゃりん」という音を立てました。…嬉しかったですねえ。

しかしこれは勿論、地獄の一丁目に過ぎないわけです。西山に「ぶっちゃけた話、国内で製造すると1枚いくらかかると思う?」
と聞くと、「40円じゃないかな頑張って」。40円×8万枚は?
「…まずいですなあ」計算して、自分は答えました。「コインだけで、売価5000円の計算だ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ここから、海外製造についての調査が始まりまして…、色々すっとばしますが…、あのようなコインが40枚、収まることとなりました。
税抜7500円、税込8100円という価格設定は…、初版枯山水と同じですが、これもまた「何とかここに抑え込んだ」という感想があります。
原価ベースで数百円余分にかかればあっという間に売価が上がりますから、途中では「売価1万円越え」を覚悟しなければならないのかな…、
と考えた瞬間もありますし、「金貨と木皿をプレミアム版専用、もしくは別商品にする」という可能性について考慮もしました。

しかし、何とか当初の構想通り、全てのパトロネージュに「金貨と木皿」を付けたかった。
金貨のことばかり言ってますが、アカシア製のこの木皿も、風合いですとか曲面の具合といった点、また「金貨と共に立てる音」と言った点で、
割り引けるものではありませんでした。

加えて、ゲームマーケットで先行販売分をご購入の方にはお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、中敷きのこともあります。
内容物として金属コインを入れることに決めた時、「箱の中で金貨が飛び散って、カードを痛めたりしたらまずいよね」
という議題は、すぐに生じました。ケイラスの限定版で、金貨が中敷きをぶち破ってるのを発見ししょんぼりした方も、いらっしゃるでしょう。
また、採用した木皿は手工業で作られている製品で大きさにばらつきがあったので、それを吸収できる構造が必要でした。
加えて、このゲームは大量のカードが入っているため、「スリーブを付けたら入るのか」という問題。
中敷きを変形できる機構にして、スリーブを入れた後でも一応収まるように…してみています。
あとカードが入るスペースの上にゲームボードをはめると蓋のようになります。

入れられるかぎりぎりだったため内容物には書いていませんが、山中さんの手による「パトロネージュ講座」は、
親しみやすくルネサンス芸術の知識を与えてくれ、素晴らしいものになっているのではないかと思います。
このゲームに採用されている芸術作品が現在どの美術館に所蔵されている、というような一覧を含め、
枯山水に続き、自分たちなりには「テーマを適当に取り扱わないように…」という形にさせていただきました。

カードの印刷については、日頃より弊社ゲームの国内製造でお世話になっている印刷会社「株式会社SYS」さんにお願いしています。
このゲームの試みにご賛同をいただき、名作カードの金箔加工を含め、予算や納期や、様々な無理を聞いていただきました。

山田さんと、私たちニューゲームズオーダーと、ゲーム作りの考え方について、相違点は少なくはありませんでした。
そのために難しいことはたくさんありました。しかし、共通している大きな一点が、揺ぎ無くあったからこそ、
パトロネージュを出版することができたと思います。

面白いゲームとは、皆さんに楽しんでいただきたいゲームとは、どういうものか?

その一点は、制作に際して一度も揺らぐことなく、共有していたと思います。
そのゲームは、どうすることによって本当に、本当に実現できるのか?プレイヤーの皆様のお力を、喚起できるのか?
その点に関しては、山田さんに譲っていただき、私の考えを通させていただいたことは少なくありません。

「このゲームは本当は面白いんだ」と言いたくはありません。私がそう遠吠えをすることなく、皆さんに面白さをお届けすることができるかどうか?
関係各方面の皆様のご助力をいただき、2017年の我々ニューゲームズオーダーの、全力を投じました。

本場ドイツで認められるかどうかとか、私としてはあまり興味がありません。
テーブルを囲んだ3〜4人の皆さんが「俺のボッティチェリ仕事しねええええええええええ!」とか、
「うわああああサンピエトロ流れたああああ」とか、「俺の工房の名も無き画家たちがモナ・リザを描いた…」とか、
「奮起来い!奮起!」とか言いながら、金貨をちゃりんちゃりんと木皿に投げ込んで、ひと時楽しんでいただけるかどうか。
そこにしか興味がありません。その数人にしか、興味が無い。
その数人が最高に楽しんだら、それは最高のボードゲームってことでも良いかなと。

僕らの考える面白いボードゲームというのは、例えばこういうものです。
ということで、明日中にも、弊社サイトでの通信販売を開始予定です。
よろしければパトロネージュ、遊んでみていただければ幸いです。正直…お勧めです!

 

 

 


[#34] 「シド・サクソンのゲーム大全」Amazon未入荷の件についてご説明

本日は、12月16日に一般販売を開始しました書籍「シド・サクソンのゲーム大全」につきまして、
Amazonに入荷されていない状態が続いている件をご説明したいと思います。

私共としてはなお1000部以上の在庫を持っており、Amazon(e託サービス)からの注文を待っている状態が続いているのですが、
12/21時点でなお注文が来ていないため、納品が行えない状況です。

何故注文がなされないのかについては出荷開始直後にAmazonに問い合わせ済みです。
返答は「日販からの入荷を予定しているため」ということでした。
しかし、弊社から日販さんには書籍を出荷しておりません。
これは弊社が(私共の書籍がホビー商材の性格が強いことから)書店流通としては一般的な委託・返本の取り扱いに対処できない為です。
(Amazonのe託からは実質返本が無い為、例外的に委託取り扱いを行っています)

弊社が唯一取引している書店取次「地方・小出版流通センター」さんはほぼ買い切り条件での書籍注文を行ってくれるため、
大型書店等への納品については一括してお願いしております。本件について今回先方に問い合わせたところ
「確かに日販さんからAmazon向け名目で当該書籍を融通するよう連絡があったが、NGOさんの書籍はAmazon向けには出さない約束なのでお断りした」
という回答を得ています。
(流通に際してAmazonへの出荷が混線しないよう取り決めており、これをしっかりと守っていただいていたわけです)

…と、ここまでの経緯もAmazonサイドには説明済みで、ここ数日注文を待っているのですが、残念ながら注文は来ておりません。
多数のお客様がAmazonでのご注文をご希望であり、私共は即日Amazonに出荷可能な形で在庫を持っているので心苦しい状況ですが、
当書籍については早々の品切れ等が起きているような状況ではございませんので、その点はご安心いただければ幸いです。

ボードゲーム専門店各店やイエローサブマリンさん等を中心に平常にお取り扱いいただいておりますので、
ご興味おありの方はお手数ですがAmazon以外の売り場にお問合せをいただければ幸いです。
Amazonでも購入可能になりましたら弊社Twitterにてお知らせいたします。

 

 

 


[#35] B2FGames店舗の年末年始の営業日程について

立川のB2FGames店舗の臨時休業日程は以下の通りです。

12/28(木)臨時休業
12/29(金)年内最終営業

12/30〜1/3はお休みをいただきます。

1/4(木)2018年初営業


ご来店に際してはお手数ですがご確認をよろしくお願い致します。